プレーヤーとマネージャー

2010/1/20作成

ものすごく乱暴にまとめると、世の中の仕事はプレーヤーとマネージャーに大別できます。プレーヤーとは、手を動かす仕事です。野球で例えると、ピッチャーとかバッターとかですね。マネージャーとは、人を動かす仕事です。同じく野球で例えると、監督に相当します。もちろんプレイングマネージャーとして両方を兼任する人も居ます。

プレーヤーの仕事については、理解しやすいと思います。ピッチャーやバッターの仕事というのは、投げることであったり打つことであったりですから、それぞれの技術があればいいわけです。

マネージャーの仕事というのは、人を動かす仕事ですから、本来ならば手を動かす能力は必要ないことになります。しかし、実際のところとしてマネージャーになるのは元プレーヤーという場合が多くなる傾向にあります。理由はいくつか考えられます。

プレーヤーとしてそれなりの実績が無いと、プレーヤーが言うことを聞かないという理由も考えられます。だから、名選手必ずしも名監督にあらずなんだけど、とりあえず名選手が監督になっていくという傾向はあるわけです。

プレーヤーの経験が無いと人をどう動かしていいか分からないというのがあります。一理あるのですが、しかしバッター出身の監督は経験の無いピッチャーの指揮もしなければならないわけで、完全に合理的な理由というわけでもありません。学校の部活などでは、なり手がいなくてプレーヤー経験の無い先生が顧問や監督を務めるというパターンもあるわけですから、絶対に無理というわけでもありません。名選手必ずしも名監督にあらず、とも言われますから、プレーヤーとしての能力とマネージャーとしての能力は本来全く別物のはずです。

うまくまとめられないのですが、なんというかマネージャーの能力というのは人を動かすことなんだから、手を動かすこととは全く別個だよなぁと思うんですが、世の中では上述のように手を動かすことの延長線上に人を動かすことを求める傾向があるような気がするんです。しかし、先ほども書きました通り、プレーヤーとマネージャーの能力は全く別個ですから、プレーヤーの経験が無くてもマネージャーは務まるはずなんです。また、プレーヤーからマネージャーになった場合、プレーヤーの経験がかえって視野を狭くすることに繋がるという危険性もあります。名選手でなおかつ名監督になればそれはそれでめでたいことではありますが、そんなのはごく一部の希少な例であって、全ての名選手に期待するものではないと思います。

まだうまくまとめられなくてだらだら書いてしまっていますが、結論としては

といったところを考えていたのでした。

(2021/1/26追記)

改めて読み直したところ、内容が伝わりにくいかなぁと思ったので、繰り返しも含めて少々加筆してみます。

そもそもこれ、昔の職場での同僚の愚痴からきてるんですね。当時は私はCG制作プロダクションで働いていまして、同僚は制作チームのマネージャーというかディレクターをしていました。そのチームでは制作ソフトとしてSoftimageを採用していたんですが、同僚はSoftimageの経験がなかったんですね。もちろん他の制作ソフトの経験はありますし、CGにも映像にも豊富な知見を持っていました。でも、チームメンバーはSoftimageを使ったことの無いディレクターに口を出して欲しくないと言って、全然言うことを聞いてくれなかったそうなんです。

まあ、メンバーの気持ちもわからんでもないです。私はプログラマですから開発チームに所属してますが、開発チームのマネージャーとして開発経験がない営業や経理の人がやってきたら、やっぱりちょっと落ち着かない。これがRuby on Railsの現場で、Javaしか経験が無いマネージャーが来たとかだったら、まだ開発者同士という共通言語で話し合えるとは思うんですね。だから同僚のケースでも、CG制作の経験を共通言語で話し合うことは出来るとは思うんですよね。でも当時の制作メンバーは話し合うのを拒否したと。結局そのチームはもっと上のレイヤーの事情で解散になってしまったので、問題は解決することもありませんでした。

そりゃまあ、マネージャーには現場の経験が無いよりはあった方がいいですよね。でも例えばマネージャーの極致と言えば社長ですが、社長はその会社の全ての事業の現場経験が必要かっていうと、そんなことはないですよね。そもそもマネージャーの仕事ってのはチームが円滑にアウトプットできるようにチーム管理することであって、現場で手を動かすことではないんですよね。管理するにあたって現場での経験は役に立つけれど、それがすべてでは無い。だから畑違いからの現場経験の全くないマネージャーでも、理屈の上では問題ないはずなんです。気持ち的に落ち着かないってのはわかりますけどね。でもだからってマネージャーを無視したり、仕事をボイコットしたりってのはやっぱり違うと思う。どうしてもマネージャーの指示が頓珍漢で仕事の遂行上問題があるというのなら、さらに上の上司に訴えかけるべきでしょうねぇ。

(2021/1/27追記)

さて、もともとのテーマについて書いたあとにですが「プレーヤーとマネージャー」で近年よく言われるようになった問題についてもちょっと考えてみます。いわゆる「プレーヤーのままキャリアを積むか、マネージャーに転身するか」ってやつですね。

これ、根っことしてはプログラマ35歳定年説にも通じてるところがあると思うんですね。現場でプレーヤーとして通用するのは35歳までで、それ以降はマネージャーを目指すんだって。

でもそもそもの疑問って、マネージャーはプレーヤーの上位スキルなのかってことなんですね。そりゃまマネジメントするのにプレーヤー経験はあった方がいいけど、必須ではない。

そもそもマネージャーって、マネージャーという職業だと思うんですよ。決してプレーヤーの延長にあるものではない。その点、例えば公務員とかはそうなってるんですよね。I種試験に合格したらキャリア組となって、最初から管理職としてキャリアをスタートする。一般職の人はどんなに優秀でも昇進の上限があるのは身分制度チックで別の問題はありそうですが、マネージャーをマネージャーという職種であると明確化している点では理解できる。軍隊とかでもそうですよね。士官学校卒業したらいきなり士官になる。兵卒はどんなに優秀な人でも大将にはなれない。

でも多くの一般企業ではこのようにマネージャーを区別してはいない。せいぜい総合職と一般職という区別があるくらい。総合職で入社しても、最初のうちはプレーヤーでキャリアを積み、頭角を現した人が徐々にマネージャーとして昇進していき、最後には社長に昇り詰める。豊臣秀吉のような兵卒から天下を取るような立身出世物語は夢がありますが、それはあくまでも豊臣秀吉が大将としての才能があったからですよね。優秀な兵卒だったから出世したわけではないでしょう。

もう一つ疑問なのは、プレーヤーからマネージャーとして見込みのある人をピックアップするのを認めたとして、多くの会社ではマネージャーとしての育成をしてないって点です。新入社員に対してはプレーヤーとしての数か月に及ぶ研修を受けさせるのに対して、マネージャーに昇格する際には「今日から君は課長ね」って言って、いきなり部下を与えて放り出されてしまう。当人はプレーヤーとしては優秀で経験も豊富でしょうけれど、マネージャーとしての経験は、部下として見てきた経験しかないわけですよね。マネージャー研修を行ってる会社もありますが、せいぜい数日程度で内容もパワハラに注意しましょうとかそんな内容が多いような気がします。それはそれで大事なことではあるんですけれど。

ということで、そもそもとしてプレーヤーの先にマネージャーというキャリアパスを設けるという考え方自体がそもそも疑問だと思っています。マネージャーはマネージャーで独立した職業だろうと。