ワールドワイドウェブの敗北

2021/6/8作成

RSSリーダーを使おうとか個人サイトについて勝手に語ってみるなどを書いているなかで、なんとなく一つの結論に結びついたかなと思ったのでまとめてみます。

その結論というのは、ワールドワイドウェブの敗北です。敗北って言っちゃうと少々語弊があるかもしれないかな。要するに、ワールドワイドウェブが目指していた理想が、どうやら現在では実現されない方向に進化してしまったのではないなかということです。

ワールドワイドウェブの理想とは、ハイパーリンクによって世界中のウェブサイトがリンクし、インターネット上のウェブシステム全体があたかも一つの巨大なドキュメントデータベースになることであったと思います。それをさらに推し進めたセマンティック・ウェブという概念も登場しました。個人サイトやRSSも、このワールドワイドウェブの理想を実現する一翼を担っていたと思うんです。それぞれのサイト自体はどこにどんな形で存在しようとも構わない。ただインターネット上にありさえすればいい。ユーザはインターネット上を自由に飛び回って求める情報を手に入れていく。そんな世界が理想だったわけです。

でも現代のウェブは違います。人々は多様なサイトを選び取ってアクセスすることはなく、少数の巨大ウェブサービスだけを使用し、その中だけで全てを完結しようとします。RSSなどを使って個人サイトを自ら訪問することはなく、ただただサービスから提供されるタイムラインを享受します。ハッシュタグやキーワードを使って検索するにしてもサービス内に閉じています。とにかくサービスの中から外に飛び出すことはありません。サービス提供側にとっても、アクセス数がすなわちマネーとなる現状から、とにかく外部サイトにユーザが流出することを防ぐことに腐心します。単なるメッセージ交換アプリだったはずなのに、アプリ内でマンガが読める、決済ができる、フリマが出来る、なんでもありです。ワールドワイドウェブの思想であれば、これらの別サービスはそれぞれ本職として運営しているサービスへリンクを張れば済むことでした。でも今は外部へのリンクは極力抑えられている。そしてユーザの行動もそちらに最適化されてしまっている。特定のサービスの中に閉じこもり、サービスの提供する機能だけを享受して楽しむ。つまり、ワールドワイドウェブの掲げた理想は実現されることなく終焉してしまったということではないかなと思ったわけです。個人サイトが衰退したのも、RSSが使われなくなったのも、それぞれ個々の理由もあるかもしれませんが、ワールドワイドウェブの理想が敗北したというのも大きな理由ではないかと思った次第です。