HDDが無くなっても困らない

2012/4/1作成

HDDはオワコン?という記事を書きましたが、その後もつらつらと考えていたので、ちょっとまとめてみます。

まず、現時点においてもスマートフォンやタブレットにはHDDは入っていません。SSDでもありませんが、ストレージがフラッシュメモリであることには違いがありません。ではこれらのデバイスのユーザはHDDでないことで困っているかというと、そんなことはありません。そもそもこれらのデバイスでストレージがふっとんだという話をほとんど聞きませんし、もしふっとんだとしてもユーザは多分それほど困りません。なぜなら、これらのデバイスは基本的に母艦PCもしくはサーバとデータを同期して使用しているからです。データは全て母艦PCもしくはサーバ側にコピーがあるというか、むしろ母艦PCもしくはサーバにあるデータがマスターで、デバイスにそのコピーを入れて持ち歩いているというのが適切でしょうか。いずれにしても、デバイスのストレージの信頼性が問題になることは基本的にありません。

この考え方は、そのままノートPC、特にサブノートなどのモバイル用途が主体のノートPCへも適用できます。HDDは耐衝撃性、重量、消費電力のいずれにおいてもSSDに劣ります。信頼性と価格と容量がSSDを上回っていたのですが、価格と容量はSSDが猛追しています。残るHDDの優位性は信頼性ですが、スマフォやタブレットと同様、モバイル用途のノートPCでも基本的にデータはデスクトップPCやサーバに置いてあって、あくまでも持ち出し用途として使用されるという形態がほとんどです。出先でデータを更新することがあっても、更新したときにメールで送信したりVPN経由でサーバにコピーしたりすることが多いでしょう。そういうことがなかったとしても、万一ストレージが破損しても消失するのは出先の数時間で更新した分だけですから、それほど痛手ではありません。ということで、モバイル用途のノートPCも今後急速にSSDに置き換わることが予想されます。

HDDはオワコン?の追記でも書きましたが、冗長構成を取れるエンタープライズ用途であれば、HDDかSSDかは単にコストパフォーマンスで比較されますので、SSDに置き換えられる場合も今後多く出てくるでしょう。HDDはオワコン?で書いていなかった要素としては、消費電力があります。急速なネットの発展に伴い、データセンターでは消費電力及び電力密度が大きな問題になっているそうです。HDDはモーターという発熱部品を抱えていますから、どうやっても一定以下の消費電力には下がりません。一方SSDは純粋に半導体ですので、微細化が進めば消費電力も下げることが期待できます。フクシマ以降、省エネというのも大きなキーワードになってきましたから、そういう意味でもSSD化が進むことが予想されます。

コンピューティングの上からも下からもSSD(フラッシュメモリ)化が進んでいくわけですが、最後に残されるのはデスクトップPCということになります。前回も書きましたが、デスクトップPCにおいてはストレージの信頼性が必要ですので当面はHDDが使用され続けると思われます。ではデスクトップPC市場がある限りHDDは生き残るかというと、それはちょっと違うかもしれません。というのは、デスクトップPC市場自体の未来が明るくない可能性があるからです。

世界のデスクトップPC需要の大半はオフィス用途です。おそらくですが、今後オフィス用途においてタブレットコンピュータへの置き換えが急速に進んでいくのではないかと予想します。なぜなら、大半のオフィス業務において汎用PCは過剰性能であり、タブレットコンピュータで十分だからです。別にこれは目新しい考え方ではなくて、ネットワークコンピュータが予想していた未来が単純に到来するだけの話です。ネットワークコンピュータは単に登場が早すぎたために成功しませんでしたが、これがタブレットコンピュータとして現実化するのはおそらく間違いないでしょう。

ではPCは家庭用に残るかというと、それも残りそうにありません。こちらもタブレットコンピュータに置き換わるでしょう。既にデジカメ画像の管理などはPCで行うのではなくウェブサービス上で行うのが一般的になっています。家庭にあるコンピュータがPCである必要性はほとんどないでしょう。

となると、最終的にPCが残るのはマニア向け市場のみということになってしまいます。私もそうですが、コンピュータマニアにとってタブレットコンピュータでは自分の行いたい作業が全て置き換えられないので、マニア向けのPCの需要というのは当分は残るでしょうが、その市場規模は大変に小さいことになるでしょう。そして、その小さくなったPC市場に対してしか供給されないとなると、HDDの未来はやはり明るくないということになるのではないかと思います。