ウィキペディアことはじめ レッスン2

2014/8/17作成

ウィキペディア編集入門「ウィキペディアことはじめ」の第2弾です。第1弾ではなんだかんだといって執筆以前のことに終始してしまいましたので、今度こそ実際の執筆について説明してみたいと思います。と言っても、私はあまり執筆の実績はありませんでして。あまりというか全然というか。一応、皆無ではないつもりではあるのですが。私なんかよりFA(秀逸な記事)/GA(良質な記事)作家の方が手引きを書いたほうがいいのかもしれませんが、それはそれでレベルが高くなり過ぎそうな気がしないでもないです。FA/GAは目指すべきところではありますが、誰でもそのレベルまで到達できるわけではありませんし。ということで、あくまでも初心者向けの入門ということでご容赦ください。

最初は誰でも初心者

ウィキペディアの執筆に参加しようと思った場合、やっぱり記事を一から執筆したいと思うことだと思います。ちなみに、新規に記事を作ることを「立項する」と呼びます。

立項してみようと思うのは自然なことだと思うのですが、ちょっと待ってください。あなたはまだウィキペディアの執筆は初めてのはずですよね。その人がいきなり立項して大丈夫でしょうか。もちろんウィキペディアでは全ての記事は修正はすることができます。なので問題のある立項であっても、修正することは出来ます。でも、問題があることがわかっているなら立項しない方がいいですよね。あなたが立項しようとしている記事が問題があるとは限らないのですが、問題がある可能性は高いと言えるでしょう。なぜなら、あなたはまだウィキペディアの執筆については初心者なのですから。

誰であっても、何事であっても、最初はみんな初心者です。それは当然のことだと思います。2chでも半年ROMってろと言われます。なのですが、なぜかウィキペディアに関しては、初心者にも関わらず自分は玄人であると思いこんで、いきなり記事を書き始める人がとても多いのです。ある意味、そうした心理的な障壁の低さはウィキペディアの理想でもあるのですが、実際のところはそうした執筆が問題となることも多いのです。ですので、まずは自分が初心者であることを自覚し、少しずつ練習を積んでいきましょう。

サンドボックス

では具体的にどのように練習をすればいいのでしょうか。まず練習の場として「Wikipedia:サンドボックス」というものが用意されています。ここは基本的になにを書いてもかまいません。「あああ」とか「テストテストテスト」とかそんなのを書いてもかまいません。練習の専用の場所なのです。ただしですが、サンドボックスも公開されたページです。著作権で保護されたテキストを転載するなど、問題のある投稿はしてはいけません。

ウィキペディアではwiki記法を使ってテキストをマークアップすることが出来ます。しかし、wiki記法は記号を使った書き方ですので、慣れないと実際にどのような表示がなされるかイメージすることが難しいです。そこで「プレビュー」という機能を使用します。プレビューを使用しますと、編集したテキストを保存せずに、どのような表示になるか確認することが出来ます。wiki記法がどのように表示されるかもそうですが、テキスト部分についてもこのプレビューで誤字を発見したりすることもあります。保存する前に、必ずプレビューするようにしましょう。

プレビューを行って確認して、もう大丈夫と思えるようになったら初めて保存を行います。このときに注意したいのは「要約欄」です。要約欄とは、その編集がどのような意図をもって行われたのかを簡潔に記載したものです。プログラマの方でしたら、バージョン管理システムにおけるコミットコメントと思っていただければ分かりやすいでしょう。要約欄に適切な記載がありますと、編集履歴を確認するときに非常に役に立ちます。なので、よほど些細な編集でないかぎり要約欄は記入するようにしましょう。

要約欄と共に履歴確認で役に立つのが「細部の編集」というチェックボックスです。これは些細な誤字の修正などで記事の内容自体には基本的に変更を加えていないときにチェックを入れます。そうすると、履歴を確認する人は、この版は重要な編集ではないことがわかり確認を飛ばすことが出来ます。

サンドボックスでもう十分と言えるくらいまで編集の練習をすることをお勧めします。

雑草とり

いよいよサンドボックスから旅立って記事の編集を始めます。が、いきなり長大な記事を書き下ろすというようなことは、まだやめておいた方がいいと思います。何度も繰り返しますが、あなたはまだウィキペディアでは初心者なのですから。いきなり長大な記事を書き下ろすこと自体は自由なのですが、それをウィキペディアに投稿しても削除されてしまう可能性が非常に高いです。何事もそうですが、一歩一歩地道に進めていきましょう。一足飛びにいこうとしては、転んでしまいます。

では何をするかというと、最初は些細な編集から始めることをお勧めします。このような編集をウィキペディアでは「雑草とり」と呼んでいます。一番いいのは、誤字の修正。これは明らかに間違いですから修正すべきものですし、修正して文句を言われることもありません。ただ、誤字がある記事を見つけるというのがなかなか難しいのですが。検索して出てくるわけでもありませんし。ともあれ、もしも誤字がある記事を見つけたら編集して修正してみてください。

雑草とりを行うべき記事の見つけ方としては、例えば「Category:修正が必要なページ」に含まれている記事群があります。ここにある記事は対応が難しいものも多いので、やたらめったらと手を出すのはやめておきましょう。初心者でも比較的手を出しやすいのは「Wikifyが必要な項目」でしょうか。ここにはwiki記法が適切に使われていなくて表示が見苦しくなっている記事が分類されています。Wikifyは記事内容についての理解はそれほど必要とされませんし、編集して修正するとしても内容を追加も削除もすることがありません。そういう意味では初心者向けの編集題材なのですが、wiki記法についてある程度精通していないと、かえって記事破壊になってしまう危険性もあります。wiki記法に十分に慣れているようでしたら、「Wikifyが必要な項目」をチェックしてみるといいと思います。

コミュニティ・ポータル

ウィキペディアの編集は一人の人間が行っているのではなく、多数の人間が集まってコミュニティを形成して行っています。そのコミュニティのための入り口ページが「Wikipedia:コミュニティ・ポータル」です。コミュニティ・ポータルにはウィキペディアンに対する各種のお知らせがまとまって掲載されています。これまでウィキペディアを閲覧でしか使っていなかった方は、このようなページがあることすら知らなかったのではないでしょうか。実は内部ではこのようなページで情報共有を行っているのです。

さて、コミュニティ・ポータルで初心者の方に見てもらいたいのは「Wikipedia:メインページ新着投票所」です。ここでは新規に作成された記事の中から、ウィキペディアンがよく出来ていると思った記事を投票で選んでいます。ということは、ここに一覧されている記事は、比較的よく出来た記事というわけですね。良い記事の書き方を学ぶ方法の一つは、良い記事を見ることだと思います。良い記事をいくつも見ていけば、どのような記事が良いかわかるようになるでしょう。

ちなみにですが、新着記事の中でも特に良い記事が「月間新記事賞」が選出され、更に良い記事は「良質な記事(GA)」や「秀逸な記事(FA)」に選出されます。ウィキペディアには現在92万本の記事がありますが、良質な記事は917本、秀逸な記事は71本しかありません。FA/GAは確かに素晴らしい記事なのですが、当然ながらそれを書くのには大変な労力が掛かります。初心者のあなたには、いきなりそれを書くのは難しいでしょう。FA/GAと比べれば、新着記事を書くほうがだいぶハードルは低いです。もちろん新着記事を書くことも簡単なことではありませんが、あまりに上手すぎる手本は手本にもなりにくいです。新着記事を参考にして、どのような記事の書き方が良いか学ぶのは、いい方法だと思います。

コミュニティ・ポータルでもう一つ見てもらいたいのは「Wikipedia:削除依頼」です。これは、問題のある記事が審議にかけられ、削除すべきと決まったら実際に削除されてしまうという場所です。これはさきほどのいい記事の見本とは逆に、悪い記事の見本になります。削除依頼にかけられている記事自体や削除依頼の審議を閲覧することで、ウィキペディアではどのような記事が問題になるのかを学ぶことが出来るでしょう。

資料

「ウィキペディアことはじめ 第1弾」でも書きました通り、ウィキペディアというのは資料に書いてあることを書くところです。決して、自分の知っていることを書くところではありません。なので、ウィキペディアに記事を書くには、まず資料を用意することからはじめないといけません。

ただ、資料と言ってもなんでもいいわけではありません。信頼できる検証可能な二次資料である必要があります。いきなりたくさんの単語が出てきた上に、これらはウィキペディア上で独自の意味を持っていますので、それぞれを詳しく説明しましょう。

まず「信頼できる」というのは、その記事の分野において権威があるかどうかということです。時事一般においては全国紙の新聞は信頼できる資料になります。しかし、例えば自然科学の分野に関しては新聞はそれほど信頼できる資料ではありません。自然科学ではその分野の専門書が権威ある資料と言えるでしょう。

次に「検証可能」とは、いつでも誰でも検証ができると言うことです。書籍は絶版になっていなければ書店で注文すれば取り寄せて内容を確認することが出来ます。絶版になっていても古本屋や図書館で見つかるかもしれません。また、原則的には日本国内で出版された書籍は全て国会図書館に納本されることになっていますので、書籍・新聞・雑誌などは検証可能な資料となります。ここで注意すべき点は、検証が可能であるかどうかと、検証が容易であるかどうかは別問題ということです。国会図書館は東京と京都にしかありませんので、それ以外の地域の人にとってはたどり着くだけで大変です。でも、それが不可能ではありません。書店で取り寄せ可能だけど高価な専門書でとても小遣いでは買えないとしても、それも不可能ではありません。なので、書籍などは検証は容易ではなくても検証可能な資料として取り扱うことになっています。

最後に「二次資料」についてです。二次資料があるわけですから、当然一次資料というものもあります。一次資料というのは、対象自体が発表した資料になります。例えば人物記事であれば、自伝などがそれに当たります。自伝に書かれていることは真実かもしれませんが、もしかしたら話を盛っているかもしれません。なので、ウィキペディアでは基本的に一次資料は使いません。二次資料とは一次資料を分析・評価したものです。

かなり難しい書き方になってしまいましたが、簡単に要約すると全国紙や入門書ではない書籍は資料として使えると思って、おおよそ間違ってはいません。

ここまで書籍や新聞などの紙資料について述べてきましたが、電子資料ももちろん使用できます。一般に公開されているウェブサイトはもちろん使用できます。電子書籍も大丈夫です。会員登録が必要なサイトや有料サイトも、検証が容易でないだけですので資料として使用することは問題ありません。

記事の書き方

資料が揃いましたので、ようやく実際の記事の編集に取り掛かります。どのように記事を書けばいいかは、新着記事や削除依頼を見てある程度分かるようになったかと思いますが、ここで改めて特に注意すべきことを簡単に述べておきたいと思います。

一つは、詳細な情報は書かないということです。ウィキペディアは百科事典です。専門書でもありませんし、伝記でもありません。あくまでも記事対象の概略が記載されているべきであって、詳細な情報や些細な情報(トリビアのたぐい)は必要ありません。

資料を見ながら記事を書くときに特に注意しなければならないのは、著作権に配慮するということです。集めた資料は、大抵は著作権が保護されています。資料を丸写しにしてしまっては著作権侵害になってしまいます。これは法律に触れるという意味でももちろん問題なのですが、ウィキペディアのライセンス上の問題にもなります。ウィキペディアのテキストは自由に再利用できることになっていますので、利用者は自分の作品に再利用します。しかし、そこに実は著作権を侵害した自由でないテキストが含まれてしまっていたとなると、再利用者にまで影響が及んでしまうわけです。ですので、絶対に著作権侵害をしてはいけません。資料を見て、対象について理解して、自分の文章で書くようにしてください。

立項

ある程度記事の編集に慣れてきたら、やはり立項してみたくなるものだと思います。実際には、既に立項してみたけれど、たくさんのタグを貼られてしまって凹んでいるかもしれません。そうだとしたら、今度こそタグが貼られないような立派な記事を立項するようにしてみましょう。

立項するにあたって、まず最初にするべきことは、その対象の記事が既に存在しないかどうか確認することです。自分が立項しようと思っていた記事名とは別の記事名で既に作成されているかもしれません。また、対象が立項するに値するかどうかの検討も必要です。まだ草案ではありますが「Wikipedia:独立記事作成の目安」をチェックしてみましょう。対象が立項するに値しないのであれば、その対象を含む記事を探して、そこに加筆するという方法も考えられます。

さて、これらの下調べを行った結果、立項することにしたとしましょう。次にするべきことは、記事名を何にするかです。もちろん対象の名称をそのまま使用するのですが、ウィキペディアには記事名の付け方のルールとして「Wikipedia:記事名の付け方」が定められています。こちらに従った記事名を付けるようにしましょう。

記事名が決まったら、あとは実際に記事を書きます。どのように書けばいいかは、既にある程度習得できていることでしょうから、ここで今更書かなくても大丈夫ですよね。もしもまだ不安があるようでしたら、急がば回れです。前のステップに戻って更に練習をしましょう。とはいえ、完璧に自信が付くまで立項してはいけないというわけでもありません。法律に違反することを除けば、ウィキペディアの編集で失敗しても取り返しの付かないことはありません。失敗するとわかっていて行うのは問題ですが、過度に失敗を恐れる必要もありません。

ノート

最後になってしまいましたが、ノートページの紹介です。ウィキペディアでは全ての記事にはノートページが存在します。ノートページでは、その記事の内容についてウィキペディアン同士が相談します。相談しますというか、議論という単語の方が馴染みがありますが。議論か相談かはともかく、話し合うわけです。

例えば記事の内容について問題に思うことがあって書き換えたいけれど、いまいち自信がない場合。そういったときはノートページにその旨を記載するといいです。その指摘がもっともだと思う人が居れば、そのように書き換える人が現れるでしょう。書き換えるまではしなくても、資料を指し示してくれたりして改善についてのヒントをもらえることもあります。逆になぜそのような記述になっているかの説明をしてもらえるかもしれません。

また、あなたが行った編集に対してノートでコメントが付くこともあります。その場合は、なぜそのような編集を行ったのは、ノートで説明をするようにしましょう。相手がそれで納得してくれるかもしれませんし、あなたの解釈の間違いを指摘してくれるかもしれません。記事の内容を改善する方法は、記事自体を編集するだけではありません。このようにノートで議論することも立派な改善に繋がるのです。

ノートで議論するときに注意することは次の三点です。