ウィキメディア・コモンズのススメ

2022/3/1作成

デジカメやスマホの普及により、誰でも気軽に写真が撮れる時代になりました。撮った写真はSNSなどにアップして人に見てもらうことも多いかと思いますが、ここではそのほかの方法としてウィキペディアに載せてはどうでしょうかというお話をします。正確にはウィキペディアなどのメディアファイルを集積しているウィキメディア・コモンズというところなんですけれども。少々長いので、以下コモンズと省略します。ウィキペディア以外にもウィキメディア・プロジェクトはたくさんあるのですが、ここでは一旦ウィキペディアだけを取り上げることにします。

コモンズに写真を載せるメリットは、たくさんの人に見てもらえることです。ウィキペディアは世界でも有数の巨大ウェブサイトです。アクセス数も膨大です。個々の記事のアクセスは分散されますが、それでも人気記事であれば下手な人気ブログを上回るアクセスを集めます。そこに掲載された写真はたくさんの人に見てもらえますね。

また、ストックコンテンツであるウィキペディアの記事は、今後もずっと長い間見続けられます。フローコンテンツであるSNSはバズったら瞬間的にはものすごいアクセスがありますが、数日経てば忘れ去られて誰も見向きもしなくなります。ウィキペディアの場合はそうではないんですね。また、ウィキペディアはおそらく今後数十年に渡って運営されます。もしかしたら数百年かもしれません。記事は常に書き換えられるので、あなたの写真がずっと掲載され続ける保証はありませんが、でも掲載され続けるかもしれないんですよね。

そしてウィキペディアやコモンズは全てのコンテンツが自由ライセンスになっているというのも特徴です。ウィキペディアやコモンズのコンテンツはコピーし放題、流用し放題です。せっかく自分が撮った写真を他人が勝手に使うなんて許せない、と考えるのはあなたの自由です。著作権者には自分の著作物をどのように扱うか決定する権利がありますので、自由利用を許さないというのもありです。自由利用を許すのもありです。なお、ライセンスによりますが著作権を放棄するわけではありません。CC-BY-SAというライセンスの場合は、著作権を放棄しませんし、著作者名もしっかり残ります。パブリックドメインというライセンスの場合は著作権放棄になるんですけどね。この辺りのライセンスの話はややこしいので、詳しくは専門のサイトでご確認下さい。ここでは、自由利用させるからといって必ずしも著作権を放棄するわけではないということだけ理解いただければ十分です。

さて、コモンズに写真を提供するとして、具体的にはどうしましょうかというのがここからです。ウィキペディアに載せられる写真であれば何でもいいんですが、最初のうちはなにがいいかわからないですよね。そんな場合に見るといいのが画像提供依頼のページです。要するにウィキペディアの記事を書いている人が、この記事のここにこういう写真が欲しいけど、コモンズにはなかったので誰か提供してくれませんかという依頼を出しているのですね。それを見たウィキペディアンのなかで、自分ならこの写真なら提供できるなという人が提供するわけです。

それなら記事を書いた人が自分で写真を撮ればいいのにと思うかもしれませんが、みんながみんな写真を撮れる条件を備えているわけではありません。貴重品だったり今は売ってないような入手困難なモノであれば、撮影するのは困難ですね。でもたまたまそれを手元に持っている人なら撮影することが出来ます。地理的な問題もありますね。北海道の建物の写真を、沖縄に住んでいる人は簡単には撮れません。でも北海道に住んでいる人なら、なんなら自宅からすぐの場所にあるかもしれない。逆に沖縄に住んでいる人は沖縄の写真は撮れますね。そうしてみんなが少しずつ持ち寄ってウィキペディアの記事は出来上がっているのです。

では早速画像提供依頼をもとにコモンズに写真をアップするぞと思うんですが、いくつか注意点もあります。まず当たり前のことですが、自分に著作権のある写真、つまり自分で撮った写真であることが大前提です。ネットで画像検索したらちょうどいい写真があったからこれをアップしよう、というのは絶対にダメです。どんなにいい写真であったとしてもです。それは他人が撮った写真ですから。著作権侵害はそれ自体が犯罪ですし、その写真を再利用する人に対しても迷惑をかけることになりますので絶対にやめてください。

では自分で撮った写真なら何でもいいかというと、それも違います。まだまだ他者の権利を侵害する可能性はあるからです。特に人物の場合は肖像権やプライバシーの問題があります。芸能人を勝手に写真に撮ったら大問題ですし、市井の人の写真であったとしても勝手に撮って公開したら問題です。政治家などの公人の場合は肖像権はある程度制限されるという意見もありますが、しっかりと権利問題について知識を得てからにしましょう。主題が風景であってたまたま通行人が写り込んだ場合なども同様ですね。

他人の著作物を撮影するのもいろいろ問題があります。有名なところではミッキーマウスですね。ミッキーマウス自体が主題ではなければ基本的には問題ないのですが、主題であるかどうかという判断も非常に難しい問題ですので、最初のうちは避けた方が無難ですね。当たり前ですがコミックをスキャンしてアップなども絶対にダメです。

とまあいろいろとルールが難しいので、そんなメンドクサいならコモンズなんてやめておいて、これまで通りSNSにアップするわと思うでしょうけれど、ここにあげた問題ってSNSでも共通の話なんですよね。コモンズでは厳密に管理されていて、SNSでは多少の問題は目こぼししてもらってるだけの話であって。

ということで、ようやく写真を撮れて、いよいよコモンズにアップするところまできました。しつこくて申し訳ないのですが、ここでもいくつか注意点があります。

まず最初に気をつけることは、画像を縮小したりするのはおやめくださいということです。パソコンに詳しい人でしたら、ネットに公開するのにはできるだけファイルを軽くしておいた方が便利だろうと考えるかもしれません。ウィキペディアに載せるだけならデジカメで撮った最高画質は必要ないから縮小した方がいいなと。それ自体は間違った考え方ではないのですが、縮小はコモンズで自動的に行われますので、あなたがわざわざ作業する必要はありません。また、今のネットで十分な解像度は将来のネットでは不十分になる可能性があります。ウィキペディアが生まれたのは2001年。Retinaディスプレイが生まれましたのはずっと後の2010年のことです。今後更に高解像度のディスプレイが登場するかもしれません。HMDで閲覧するなら、更に高解像度があると便利ですね。つまり、今後長い年月に渡って提供される見込みのコモンズでは、今の価値観でデータを削ってしまわないようにしようという事ですね。一度削られたデータは二度と復元できません。今出来る最高のデータをコモンズに提供しておいて、その時代にあったデリバリーはコモンズに任せるというのが考え方です。ですのでデジカメでは出来るだけ最高解像度で撮影して、そのままコモンズにアップロードしてください。EXIFもプライバシーに関わるもの以外は削らないでください。とにかくデータはあればあるほどいいというのがコモンズの考え方です。

次にライセンスをなににするかです。自由ライセンスである必要はありますが、その中でもいくつか種類があってどれを選ぶかは著作権者であるあなたの自由です。デフォルトではCC-BY-SA 4.0になっていますので、とりあえずこれを選んでおくのが無難ではあります。

次にカテゴリをなににするかです。コモンズのファイルにはカテゴリが指定されています。コモンズには多数のデータがありますので、カテゴリ分けされていないと探せないんですね。コモンズは全ての言語版のウィキペディアで共通に使われるプロジェクトであるため、カテゴリ分けも英語でされています。英語が苦手な方にとってはハードル高いとは思いますが、ここは我慢してください。あなたの撮った写真を世界中の方が利用できるようになるということでもありますので。

カテゴリは複数つけることが出来ます。見当違いのカテゴリをつけてはいけませんが、合致するカテゴリであれば全てつけておいた方が、より見つけやすくなります。また、説明文も書けるなら書くといいでしょう。説明文は英語が望ましいですが、日本語でも構いません。

こうしてコモンズに写真をアップしたら、ウィキペディアの画像提供依頼に戻って提供した旨を報告しましょう。依頼した人、もしくは気がついた方がウィキペディアの記事に写真を貼ってくれるでしょう。もちろん自分で記事を編集しても構いません。

コモンズとウィキペディアでのそれぞれのページでの実際の操作方法まで書いた方が親切なんですが、とりあえずここまでにしておきます。気が向いたら操作方法を追記することにします。ではみなさん、コモンズでお会いしましょう。