マンションと民泊

2019/3/3作成

民泊って単語が聞かれるようになってから随分経ちましたね。 今更ながらマンションと民泊について少し考えを整理しておこうと思います。

まず私のスタンスとしては、分譲マンションにとって民泊は不適切だと思います。 理由はマンション敷地の通り抜けなどと同様で、限られた住民だけが居住するコミュニティであるマンション内に不特定多数の旅行者が出入りすることは管理上の問題を発生させるからです。

これは私だけの特異な考え方ではないようで、実際には国土交通省も同じように考えているようですね。 国土交通省が提供している標準管理規約にも、民泊に関する条項が加えられています。一応、民泊を許可する場合の例も記載されていますが。

国土交通省の標準管理規約に書き加えられたことから、新規に分譲されるマンションの管理規約には最初から民泊に関する条項が入っているでしょう。 現実的には分譲マンションで民泊を許可するメリットはまずありませんので、ほとんどのマンションで民泊が禁止されていると思われます。 許可されているとしたら、投資用のワンルームマンションとかでしょうか。 既存のマンションについても、まともな管理会社なら規約改正案を提案していると思いますので、結果としてほとんどの分譲マンションの管理規約が民泊を禁止するように改正済みでしょう。 もしもお住まいのマンションの管理規約がまだ改正されていないようでしたら、急いで管理組合に改正を提案した方がよいと思います。

民泊が世間でもてはやされるようになる一方で、分譲マンションのほとんどは民泊が禁止されています。 ではさて民泊はいったいどこで行っているんだろうと思ったら、実際には一戸建て住宅と賃貸用マンションで行われてるそうですね。 民泊周辺にお住まいの方にとっては住環境が悪化しているかもしれないという心配がありますので、今後も民泊の適正な運用がなされていくことを望みます。

さて、民泊と分譲マンションについては現状でほぼ無関係になっているわけですが、もう一つ個人的に考えているのは民泊というかシェアリングエコノミーと言われるもの自体について。 これかなり問題をはらんでるような気がするのですが、新しいという理由でもてはやされているような気がしないでもない。 もしくは、規制緩和は絶対善だという一部の政治思想にひっぱられて評価されているような気もする。 だとすると危険だなぁと思っています。

個人的には規制はなんでもかんでも緩和すればいいとは思っていないです。 過剰な規制であったり、一部の既得権益を守るための規制はない方がいいとは思います。 しかし、規制の大半は消費者を守るために存在しているんですよね。 たとえば民泊における規制は旅館業法による規制です。 この旅館業法は過剰な規制だから撤廃してだれも自由に旅館業を行えるようにしようというのが民泊推進派の意見なわけです。 しかし、旅館業法は別に無意味に規制があるわけではない。 それはそれで必要があって行われている規制なわけです。

宿泊すると言うことは夜はそこで就寝します。 就寝中は無防備になります。 旅館側が悪人だったら、旅行者の荷物を盗んでしまうことはいともたやすいことですね。 そういうことが起こらないように旅館業法で規制を行い、監督官庁が旅館を監督しているわけですね。 法律があれば絶対に旅行者が安全かというとそんなことはありませんが、だからって法律は不要だというのはアナーキズムにすぎるでしょう。

とある民泊ではオーナーが盗撮カメラを仕掛けていて宿泊者のプライバシーを盗み撮りしていたという記事を読んだことがあります。 本当にそんなことがあったのか、単なる警告のための作り話だったのかはわかりませんが、あり得ることだなぁと思いました。 旅館業法で規制すれば盗撮がなくなるわけではありませんが、規制がなければ盗撮はもっとたやすく起こるようになりますよねぇ。

規制は何も消費者を守るだけのものでもありません。 事業者側も守ります。 宿泊者に対する規制もあります。 宿泊時に氏名や連絡先を示さなければならないとかですね。 民泊では、宿泊者が無法に暴れまくって部屋を破壊したり備品を盗み出したりするということがあるという記事をみたこともあります。 これまた旅館業法なら根絶できる問題ではありませんが、規制がゆるければより起こりやすく、起こったときの対処も難しくなるのは自明でしょう。

というようなことから、個人的にはシェアリングエコノミーというのは世界を変えるような画期的な新技術というよりは、単に既存の秩序を破壊するだけのものだと思っています。 なお、私が問題にしているのは民泊などの民間人がサービスを提供するタイプのシェアリングエコノミーです。 一般にシェアリングエコノミーと言われているけれど、プロの事業者のみがサービスを提供しているものもあります。 カーシェアリングとかですね。 これらは実際には旧来からあるレンタル業と同等であり、歴史があってそれなりに適切と思われる規制のもとに事業が営まれているわけですから、問題であるとは思っていません。