起業の現実

2022/11/8作成

起業の現実などと大層なタイトルを付けてしまいましたが、実際には私が過去に出会ったとある社長さんのお話です。あくまでも一例ではありますが、ある程度汎用化できるお話もあるのではないかなという気もしますので書いてみます。

その社長さんは以前はとある大手メーカーに勤めてらっしゃいました。エンジニアとしては結構優秀な方でしたって書くと過去形になっちゃいますね。起業後も十分にエンジニアとして優秀でした。

その方が一念発起して起業しました。詳しくは聞いていませんが、多分それなりに夢と希望を込めて起業プランを考えたんだと思います。この事業を成功させて世の中を変えてやると思ったんだろうと思います。

そうして起業されました。プロダクトを作り上げ、世に問うたわけですが、残念ながらプロダクトの質がイマイチ。あれもこれも夢も希望もあったと思います。世の中を一変させるような画期的なプロダクトを作るつもりだったと思います。ですが、実際に出来上がったものは既に世の中によくあるモノの模倣品でしかありませんでした。それでもプロデュースがうまければ普及させることで世の中を変えることが出来たかもしれません。でも、それもうまくいくわけではありません。ありていに言ってしまえば、エンジニアとして優秀だからと言って、起業家・商売人として優秀とは限らないってことですね。言葉にすると当たり前ですが。

そんな残念なプロダクトですが、一応少しですがお客さんは付いてます。売上も上がっています。利益は出てませんが。小さいながらも社会の歯車の一つとして回っているわけですから、そこまでこれただけでも立派という考え方もあります。実際には大半の起業家はこのレベルにすら達しませんからね。でも、一方でそのプロダクトがあることで世の中になんの意味があるんだって疑問もあります。代替品はいくらでもありますからね。

多分社長さんは「なんでこんなことになってしまったんだろう」と毎日考えていたと思います。自分が思い描いた理想とはかけ離れた現実。いっそ辞めてしまった方が楽なんだけど、事業として回ってしまっているために辞めることも出来ない。自分でまいた種ではあるけれど、その事業に絡めとられてしまって身動きが出来なくなってしまっている状態。

私の知ってる範囲でも、こういう例は非常に多いです。夢と希望を持って起業するけれど、実際にはその夢も希望もかなえられるとは限らない。倒産してしまう会社が一番多いですが、倒産してなくても、ただ倒産していないだけというだけの会社も多いです。夢と希望をかなえられる起業家はほんの一握りってことですね。これもまあ、言葉にしてしまうと当たり前ですが。

とはいえ、これまた当たり前のことですが挑戦してみないと結果は出ません。こうして他人の批評ばかりして何もしていない私なぞよりも、挑戦したというだけでくだんの社長さんは立派だと思います。残りの人生を会社に絡めとられたままで過ごすのかなぁと思うと微妙ですが、それもその人の人生ですから他人がとやかく言うことでもありませんね。