「フリーランス、40歳の壁――自由業者は、どうして40歳から仕事が減るのか? 」竹熊 健太郎

2018/4/24作成

フリーランスのライター・編集家・その他多数の経歴をお持ちの竹熊健太郎氏のフリーランス指南書というか失敗談というか、あがいてる生の記録というか。世の中にフリーランス指南書やフリーランス礼賛記事はたくさんありますが、ある意味本書の方がよほど真実を突いてると思います。「自分らしい生き方!」みたいなキラキラしたキーワードに踊る前に本書を一読した方がよいのではないかと思います。

さて、私自身も業種は違えど30代後半でフリーランスの壁にぶち当りました。壁にぶち当たった理由の一つとして、本書にも書いてる通り発注側が一回り以上年下になっていくって問題もありました。

知り合いに元放送作家の方がいるのですが、長らくサラリーマンをしたあと最近になって久しぶりにフリーランスに戻られました。台本仕事もまたやるよと放送局をまわったそうなんですが、かつての伝手はみんな今はえらいさん。現場のプロデューサーやディレクターに紹介はしてくれたそうですが、当然みなさんはるかに年下。結果、実際には仕事をくれることはなかったと仰ってました。言われてみればそうかもしれませんね。この場合、竹熊さんの雑誌仕事と同じで現場に予算がなくなって、もう番組作るのに放送作家に台本依頼することもなくなったって面もあるそうなんですけどね。タレント呼んで台本無しで流れでしゃべらせてなんとか番組成り立たせることが多くなったらしい。

それはともかく本書。どうやって40歳の壁を超えるのかってノウハウをちびっとは期待したんですが、当然ながらそんなことはどこにも書いてない。竹熊さん自身の経歴、インタビューをした幾人かのフリーランスの方の事例が紹介されてて、それをもとに自分で考えるしかないってことなんですよね。そりゃまそうなんですが。改めてそれを突きつけられると、ちょっとうわーんというところもなくはない。

この本で頭をガツンとやられたのは、竹熊さん曰くフリーランスの一部は社会不適合者、極論すれば発達障害者が仕方なくなるものであるということ。フリーランスの全員ともそうとは限らないけど、そういう人は確かに実際にいるだろうね。竹熊さん自身はフリーランスになってなかったらホームレスか犯罪者になってただろうと仰ってるし。私はなんとなくフリーランスはフリーランスでなけれななしえない使命というかモチベーションを持ってる人がなるものだという感覚があったんだけど、それは考え過ぎだったのかもしれませんね。そんな崇高な意識は無くても、仕方なく流れに任せてフリーランスになってもいいんだなというのは新鮮な驚きでした。

ただ、だからって安易にフリーランスになればいいってもんではないんですけどね。当然ながらフリーランスになったらめちゃめちゃ苦労する。失敗したらホームレスか犯罪者ですし。

なんとなく私は竹熊さんというのはフリーランスの中でも成功者の部類だと思ってたんですよ。もちろん功成り名遂げたという意味では成功者には違いないんですが、本書を読む限り金銭的にも仕事的にもかなりの苦労をしてらっしゃる。というか現在進行形で苦労してらっしゃる。その苦労はフリーランスの先達として、こう言っては失礼かもしれないけれど非常に参考になるなと。私としては一回り上の世代である竹熊さんが今後どのような経路をたどっていかれるのかというのは、フリーランスの先達として非常に興味深いなと思いました。竹熊さんの辿る道筋から学ぶものはとてもたくさんあるように感じました。