債権者からみた有限責任と無限責任

2011/2/24作成

会社が潰れる場合、任意による解散を除き、大抵の場合は負債が残ります。ということは当然ながら債権者もいます。

会社が潰れて破産処理する場合、会社の残った資産を債権者で分けます。有限責任の場合は、原則としてこれでおしまいです。負債が残っても、それでおしまいです。回収する手段はありません。

無限責任の場合は違います。会社の次に無限責任社員の個人の資産を分配することができるわけです。ここが有限責任と無限責任の大きな違い。当然、債権者にとっても債権回収の可能性が高いわけですから、無限責任の方がありがたいわけです。

というのが教科書上の話なんですが、実際のところとしてはどうでしょう。私は無限責任社員ですが、万一会社が負債を抱えて潰れても、実際に支払える個人資産なんてしれてますよ。結局払えなくて個人でも自己破産しますから、債権者からしてみれば「丸裸にしてやったぜ」というカタルシスを得られる以外には小銭しか手にする事が出来ず、債権回収は夢のまた夢ということになります。つまり、無限責任社員の個人資産の量によっては、有限責任も無限責任も、債権者からしてみれば大して差は無いということになりませんでしょうか。また、逆に有限責任であっても個人で連帯保証していたり、個人資産を担保に借金していたりすれば、やはり会社倒産と当時に個人も破産せざるを得なくなります。

ではどうするのがいいのか。資力を超える保証を得るには、保険を使うのがセオリーです。一般に会社で入る保険と言えば、社長の生命保険でしょうか。特に中小企業の場合、社長がキーマンですから、社長が急死した場合などには会社も一蓮托生で潰れるのが通常です。そうした場合に、会社を清算できるだけの金額を生命保険で備えておくというのは、非常に理にかなった行動ということになります。

今回、軽くぐぐって知ったのですが、そのほかに賠償責任保険というものもあるようです。身近なものとしては、自動車賠償責任保険もその一種ですね。不慮の事故によって何か相手に損害を与えた場合に、賠償するための保険です。主に建設業とか輸送業などで用いられているようです。プロジェクトの規模が大きいし、事故率も高いからでしょうかね。

IT業界では、賠償責任保険はあまり聞いたことはないような気がしますね。ITゼネコンと呼ばれるような大企業の大規模プロジェクトでは加入していそうですが、その下請けや孫請けあたりになると、そんな保険料も惜しいということで加入していなさそうな気がします。実際、うちも加入していません。

しかし、債権者のことを考えたら、これは保険に入っておくべきなのではないでしょうか。いざというときに、丸裸になるから勘弁してくれでは、債権者としてはあまりにも救われない話ではないでしょうか。

(追記)

債権者の側に立って話を進めましたが、当然の事ながら自分が債務者ではなく債権者になる可能性だってあるわけです。だから、取引相手がこのような保全措置を講じているかどうかというのは、取引上において非常に重要な情報ということになるのではないかと思います。普段、あまり気にしてないけど。