テキスト生成AIは文章を作る時、次に来る単語を複数候補に挙げ、その内最もスコアの高い単語(=文章にもっとも適切な単語)を選択していくと言います。
この動作の説明を聞いたとき、テキスト生成AIをIME(日本語文節変換)に適用出来たらいいんじゃないかんと思いました。
IMEって結構おバカじゃないですか。正しくない変換候補を選択してしまって文章に誤字を埋め込んでしまったことの無い人は、多分居ないと思います。一方、テキスト生成AIってそういうミスはしないんですよね。ハルシネーションの可能性はありますし、論理が間違っていることはあるんですが、少なくとも文章としては破綻していることはない。特に変換ミスのような間違いは見たことが無いです。であれば、IMEにテキスト生成AIを組み込むと変換効率がぐっと上って便利になるんじゃ無いかと想像するんですよ。でも現状そうはなってないですよね。これだけ毎日のように生成AIがニュースになって、様々なところでAIが使用されるようになってきているのに。
なぜIMEでAIが活用されてないかの理由を考えてみました。一つはAPIの制限でしょうか。実際のAPIの定義は分かりませんが、おおよその動作として読み仮名のかな文字列を渡して、変換候補の文字列が返ってくるという仕組みになっていると想像されます。この読み仮名の文字列って、AIにとっては情報が少なすぎるんですよね。AIは膨大な情報を渡してやることで推論がうまく働くようになっています。プログラムのコード補完も、ソースコード全体をAIに渡すことで高精度な補完が行われるんですよね。それに対して、現在の変換対象の読み仮名文字列のみというのは圧倒的に情報量が少ない。いくらAIが高性能でも、与えられる情報が少なければ性能を発揮することが出来ません。IMEに対して参考情報として現在編集中のテキスト全体を渡すようなAPIが追加されれば、AIも本来の性能を発揮できると思うんですね。逆に言えば、そういうAPIが追加されるまではIMEにAIが組み込まれることはないのかもしれません。
近似的にテキスト全体を渡す方法がないわけではいんですけどね。テキストエディタを立ち上げて文章を書き始めた最初のIME変換では参考情報は全くありません。しかし文章を書き続けていくと、直前の読み仮名と確定した選択肢という情報がIMEの中に溜まっていきます。これを参考情報にすることでテキスト全体を推測することは出来ますね。これなら従来のAPIでも対応は可能だろうと思われます。
IMEにテキスト生成AIが組み込まれない理由を ChatGPT に相談してみたところ、レスポンスがシビアに求められる点と、IMEは開発者も利用者も保守的である点を挙げられました。ただ、これはどうかなと個人的には思います。
IMEに求められるレスポンスがシビアなのは理解できます。変換キーを押して、待たされてから変換候補が表示されたらイライラしますよね。AIの処理内容は従来のIMEの処理内容よりもはるかに高度ですから時間もかかります。結果としてレスポンスが遅くなることもあるでしょう。ただ、実際のところとしてプログラムのコード補完が実用になる速度で行わていますから、IMEでは使い物にならないかというと、そんなこともないと思うんですよね。また、クラウドのAI処理ではネットワークを経由することでどうしても時間がかかりますが、最近のPCではNPUを搭載してローカルで生成AIを動作させることも出来ます。巨大なデータセンターで動作するクラウドAIよりは性能は落ちるかもしれませんが、IMEの変換程度であれば十分ではないかと思います。ローカルAIならネットワークの影響はうけませんからレスポンスも期待できますしね。
IMEは開発者も利用者も保守的というのは、それはそうかと思います。与えられた読み仮名に対して愚直な候補を出すことに徹するという考え方も分かります。とはいえ、最近のIMEではちょっとしたタイプミスの自動補正はある程度やってくれますし、入力途中に先読みによる変換候補の提示も行われたりしますよね。IMEは保守的かもしれませんが、ずっと不変というわけでもないでしょう。世間の速度に比べるとゆっくりかもしれませんが、変革は行われるのではないかと思います。
また、保守的であったとしても、部分的にAIを採用するという方法もあると思います。従来のIMEが変換候補を複数提示し、それに対してAIが文章への適切度に応じたスコアリングを行う。そのスコア順で変換候補を表示するという方法です。これであれば変換候補は従来のIMEと変わりません。変わるのは順番だけです。IMEの保守的な姿勢に対しても十分にこたえているのではないでしょうか。