ドメインスクワッティングの終焉

2026/5/7作成

例によって私自身の観測範囲で起こった、N=1の事例に基づく妄想です。

私はもともと saoyagi.net というドメインで個人サイトを運営していました。しかし、あるときこのドメインを手放してしまったんですね。記録を調べたら2009年8月のことでした。手放しら理由は、一時の気の迷いだったわけですが。

少しして気を取り直してドメインを再取得しようと思ったんですが、既にスクワッターに取得されたあとでした。まあ、当然ですね。仕方なく saoyagi2.net というドメインを取って、以後このドメインで個人サイトを運営しています。そうなんです、今のアカウントの 2 って、たったそれだけの意味なんですよね。たまにどうして 2 なんですかと聞かれることがありますが、そういうしょうもない理由なんです。

スクワッターに連絡してドメインを買い取ることは出来たでしょうが、当然ながら法外な値段を要求されたでしょうね。先方としては、そのためにスクワッティングしてるわけですから。こちらとしてはそんな法外なお金を払う気も無いのですが、もしも手放されたら自分で取得しようかなと思い、時々 whois でチェックしておりました。それから10数年が経過してますねぇ。

最近、久々に whois で saoyagi.net をチェックしてみると、なんとドメインが空いてるではないですか。スクワッターが手放したんですね。Wayback Machine で確認してみると、2025年7月まではスクワッターの活動が確認できたんですが、8月にはその痕跡もなくなっていました。ということは、この頃に手放されたんですね。

実は whois でチェックしてると、時々所有者が変わってるんですよ。前のスクワッターが手放して次が即座に取得してということを繰り返していたようなんですね。でも今回は次のスクワッターが現れなかった。どうしたんでしょうというのが、この記事の本題です。ああ、例によって前書きが長い。

本題に入る前にもう一つ、ドメインスクワッティングについても簡単に解説しておきます。

ドメインというのはインターネットにおける住所にあたります。住所はサーバを特定できないと意味がありませんから、一つのドメインは一人(もしくは一社)しか所有できません。そしてこのドメインは基本的に先に取ったもん勝ちです。例えば apple.com というドメインをアップル社よりも先に取得することも出来るんですね。アップル社がまだドメインを取っていなければ。もしそうなっていた場合、アップル社としては apple.com というドメインを使いたいですから、現所有者に買い取りの交渉を行います。ドメインは譲渡が可能ですから、そういうことも出来るんですね。譲渡は当然タダではないでしょう。相場なんてありませんから、言い値になります。その価格で双方が折り合えば交渉成立です。結果として非常に高額な譲渡金が先取ドメイン所有者を手にすることが出来るわけですね。それを狙ってよるあるドメインを先に取りまくるのがドメインスクワッターというわけです。

ちなみに現在はドメインのルールも改良されているようで、社名や商標に関わるドメインなどは勝手に取れなかったり、もしも取得しても強制的に譲渡させられてしまったりするようですね。そういう意味では、この手のドメインスクワッティングは現在ではあまり有効ではないのだろうと思われます。

ドメインスクワッターの手口はもう一つあります。それは放棄されたドメインを取得すること。私の saoyagi.net ドメインのケースですね。ドメインを手放すなんてことがそうそうあるのかと思いますが、企業が新製品やキャンペーンのために取得したドメインを、サービスが終了したら手放すなんてことはあるんですよね。ドメインスクワッターはそういうドメインを狙っています。

手放されたドメインを取得してどうするかというと、元の所有者が再取得のために交渉してくるのを待つというのもあるのですが、もう一つはドメインの持つパワーを生かすこと。実際に使われていたドメインはドメイン自体に検索パワーがありますし、多くのリンクも持っています。なのでそこでサービスを展開すれば、全く新規にドメインを取得するよりも有利にサービスを運営できるんですよね。こうして先月までは企業のキャンペーンサイトだったのに、今月アクセスしてみたら18禁サイトになっていたなんてことが起こるわけです。ちなみに saoyagi.net は長らく看護師転職サイトになっていました。なんで看護師転職なのかは分かりませんが。儲かるのかなぁ。

ということで、後者の利益のために saoyagi.net ドメインは長らくドメインスクワッターが使用していたわけですが、それがとうとう途切れてしまった。ドメインスクワッターはお金儲けのために活動しているわけですから、端的に言ってしまうと儲からなくなったのでしょう。それはなぜかというのが本題です。ああ、長かった。

理由の一つとして考えられるのは、ドメイン料金の高騰です。かつてはドメインの維持費はタダみたいに安かったのでドメインスクワッティングで利益が出ていたのですが、近年毎年のようにドメイン維持費が値上がりしています。利益が出なくなったら辞めるというのはとても分かりやすいですね。

Google など検索エンジン側の対処もあると思います。ドメインスクワッティングされて内容が大幅に変わってしまったサイトについては検索スコアが下げられるような対策が行われているものと思われます。だって検索エンジンとしては検索ユーザに対して意図に従った検索結果を返したいわけですからね。検索ユーザの意図に反して18禁サイトを結果には出したくないわけです。検索エンジンの対策が進めばドメインスクワッターにとって利益が減りますから、ここでも経済合理性がなくなるわけですね。

スマホ時代になって、URL を直接入力するということが減ったというのもありそうです。かつてはブラウザのアドレスバーに URL を手打ちしていましたから、分かりやすくて短いドメインというのは価値が高かったのですが、今は QR コードをスキャンすることが主流になりました。もう手打ちで URL を打つことは滅多にありません。スマホの狭い画面ではブラウズ中は URL 表示も隠されてしまいますので、URL でドメインを主張することも意味がなくなりました。結果として企業にとってドメインの価値が相対的に下がってしまったわけです。企業にとってドメインの価値が下がればドメインスクワッターから高額で購入することもなくなりますから、ドメインスクワッティングする意味もなくなるわけです。

スマホ時代になって主流がウェブからアプリに移行したというのもありそうです。そしてユーザはアプリの中で回遊して完結してしまい、リンクを辿って他のサービスやサイトに遷移するということもめっきり減りました。ユーザは SNS なら SNS アプリで、YouTube なら YouTube アプリでそれぞれ閉じこもってサービスを利用しますので、分かりやすいドメインを取ってユーザを取り込むということもなくなってしまったわけです。

このような様々な理由でドメインスクワッティングの経済合理性がなくなってしまったのが現在であって、そのために saoyagi.net には次のドメインスクワッターが現れなかったのではないかなと思うわけです。単なる私の妄想ですけどね。

ドメインスクワッターというのは転売屋ですから、何かを生産することはありません。言ってしまえば迷惑業者なので、居なくなってくれればそれだけネットの世界が浄化されるわけです。ということで、ドメインスクワッティングが終焉を迎えているようで、よかったなぁと思うわけです。