アルゴリズムアルゴリズムってうるせえな

2024/3/21作成

「貧しい家の子の成績下げる」アルゴリズムの波紋

ここ最近アルゴリズムという単語がニュースになることが増えてきたような気がしますね。その鏑矢となったのは、韓流村による食べログ訴訟でしょうかね。それ以前はあったのかなぁ。あとは最近のAIブームの中で、従来のデジタル化とは一線を画する単語としてアルゴリズムが使われるようになったのかなぁという気がします。

さてリンク先のニュースではアルゴリズムに問題があったから合格判定が不公平になってしまったとあります。これに対して今後はアルゴリズムは使わないと政治家が言ってたりしますが、これ完全にナンセンスな話なんですよね。

そもそもアルゴリズムというのは計算方法のことを言うわけです。従来の点数順に上位から合格者を出していく計算方法だって立派なアルゴリズムです。しかしニュースによる扱いでは、アルゴリズムというのはコンピュータ屋が恣意的に運用する不公平な計算方法を指す言葉として定着しそうですね。こうしてコンピュータサイエンスにおけるアルゴリズムと、マスコミにおけるアルゴリズムでは言葉の意味に乖離が起こるんじゃないかなぁという気がします。まあそれも仕方がないことかもしれませんが、なんとかそうならないといいなという思いもあります。コンピュータサイエンスの末端にぶら下がるプログラマの一員としては。

さてそんなアルゴリズムの意味の話とは別に、ある程度複雑な計算を用いて合否判定などを行うことの是非について少し考えてみたいと思います。

これ、実はSEOをやってる人にとっては諦めに近い心境がずっと以前からあったんですよね。この場合アルゴリズムとはGoogle検索における検索順位です。検索順位がどのようにして決まるかは公開されていません。SEO担当者は実際の順位の動向をもとにアルゴリズムを推測してきましたが、その推測があっている保証はありませんし、アルゴリズムは予告なく突然に変更されます。こんなことを20年以上続けてきましたので、アルゴリズムに振り回されるのは当たり前という感覚が身についてしまいました。しかし、世間の人はそれは当たり前ではないと思っているわけですね。私自身も専門家ではないけれどもSEOにそれなりに携わっているものとしてアルゴリズムが非公開で振り回されるのは当たり前と思っていたので、最近の世間の反応にはちょっとびっくりしているところはあります。

アルゴリズムが公開になってしまうとハックが行われてしまうというのは事実なので、非公開なのは仕方がないという性質はあります。SEO担当者としてはこれまではGoogleのそうした言い分を素直に信じてきたわけですが、世間一般の人はそうは思わないというところで、はてどうしたものかというところですね。

食べログ裁判では裁判内でのみアルゴリズムを公開して審理しているようですが、今後これは一つの方法としてあり得るのかなと思います。ただ、全てのアルゴリズムについて裁判を行って正当性を個別に判断するというのは社会的なコストが高すぎるという問題はありますよね。

今後もアルゴリズムによって様々な判定は行われるでしょう。それは紙と鉛筆の時代にもあったことなんですが、デジタル化によってより複雑なアルゴリズムが採用可能になったという違いがあります。そのアルゴリズムが適正であるかどうかという判定を社会は行わなければならないわけですが、そのためにアルゴリズムが開示されなければならないかというと、個々の企業の競争優位性などの問題があるというのがイマココですね。どういうおとしどころがいいのか今すぐ私には思いつきませんが、今後のデジタル化社会において重要な課題の一つになるのかなという気はします。ですので、安易なポピュリズムによる判断は行われないといいなぁとは思います。はい。

(2024/3/24追記)

アルゴリズムが公開されている例を一つ思い出しました。それは暗号処理。暗号アルゴリズムは一般に公開されており、暗号の安全性は鍵を秘匿することで実現されています。実は暗号業界も昔はアルゴリズム自体を秘密にすることで安全性を担保しようとしていたのですが、逆にクラッカーの餌食になってしまいました。そのため、アルゴリズムを公開してみんなで安全であるかどうか検証しようという流れになったのです。

暗号業界はこれでうまくいくようになったのですが、Google検索などのアルゴリズムなどに容易に適用できるかというと難しいですよねぇ。Google検索のアルゴリズムが秘密なのはランキングハックを防ぐためです。アルゴリズムを公開しても別の手段によってランキングハックを防ぐことが出来ればいいのですが、そのためのいい方法は思いつかないですねぇ。なんかあるといいんですが。

別方面の話題として、上では裁判所でアルゴリズムの正当性を検証していると書きました。これ自体は良い方法ではあるのですが、いちいち裁判をしなければならないとしたら社会的コストが高すぎるという問題があります。そこで考えたのですが、アルゴリズム正当性を検証する第三者機関を設置してはどうでしょうかね。アルゴリズムは第三者機関にだけ公開される。そして第三者機関が問題ないとお墨付きをくれると。これならいちいち裁判を行う必要もありませんし、アルゴリズムを世間に対して公開しなくても、社会として正当性を検証することが出来ますね。

ただ、これで万々歳ともいきません。第三者機関で検証されたアルゴリズムが実際のサービスで使用されているかどうかという検証は難しいからです。ここはより企業秘密になっていきますよね。第三者機関による検証時のみ検証用の実装を見せて、実際のサービス提供時には隠しておいた実装を使うというようなことも容易に実現できてしまいますし、それを防ぐのは簡単ではありません。ISO9000シリーズとかでも審査の時だけいいかっこをしてる問題がありますよね。それに近しいのかもしれません。