年収1/3にかみついた話

2023/8/24作成

#防衛省 サイバーセキュリティ人材騒動のまとめ(=・ω・)年収減ってもOK?

「国がセキュリティ人材の給料を3分の1に値切ってる!」ってんでネット民が随分と吹きあがってますが、元ニュースを見るとそもそもそんなことを書いてるわけではない。

どのツイートも具体的な金額を書いてないんだけど、文脈から想像するに年収1千万くらいまでのそこそこレベルのエンジニアを年収300万円以下で働かせようとしてるという感じで批判してる。でも元の文脈はそうじゃない。年収1億取れるレベル、つまりメガベンチャーのCTOクラスのエンジニアに対して、事務次官相当の年収3000万円程度しか出せないって話をしている。みんな自分の年収が3分の1になったらで想像して吹きあがってるけど、そういうレベルの人材の話じゃないでしょこれ。

で、実際に年収1億の人がやりがいで3000万で働くかっていうと、実例はあるんだよね。とりあえず私が知ってる例でいうと東京都副知事の宮坂さん。年収が前職と現職でいくらかはわからないけれど、元ヤフー社長ですから1億あってもおかしくない。上場会社の役員だから、四季報とか見たら載ってるかもしんないけどね。一方副知事の年収はこれも調べたらどっかに載ってそうだけど、でも1億円は絶対にないよね。都知事の小池さんだって1億はもらってないでしょう。つまり、年収が大幅に下がっても、仕事のやりがいで転職する人は実在するわけですよ。

そもそも年収が2000万円を超えたくらいから先は生活レベルってそんなに変わんないらしいんですよね。年収が10倍になっても食事の回数は変わらないし、着る服の枚数だって変わるわけじゃない。そりゃ10倍100倍の値段のものも売ってるけど、満足度が10倍100倍あるわけじゃない。年収2000万円くらいあれば、日常的な生活は不自由なく送れるようになるので、それ以上の収入って名誉という意味の方が強くなってくるんだよね。プロ野球選手が契約更改でこだわる金額みたいに。あれ、お金が欲しいというよりも、自分の成績に対する価値を認めてほしいからですよね。

でですね、ここからが本題なんですが、ニュースをよく読めばそんなことを書いてるわけではないのに、文章の一部分だけを抜き出して吹きあがるってのがどうなのかなぁという話です。まあ、これ自体もよくある話だし、指摘され続けてる話でもあるんだけども。まとめであがってるアカウントの中には普段は参考になるなと思ってたアカウントもあるんだけども、こんな切り取り吹きあがりするような人だったんだなぁと残念に思っているところです。

(2023/8/2追記)

蛇足な気もするけど追記。ちょっと古い話になりますが黒田博樹選手がメジャーリーグのオファーを蹴って広島に入団した時「さすが黒田だ男気だ」ってもてはやされましたよね。あのとき「広島は選手の年俸をケチってる」って非難したいましたか。多分いないですよね。そういうことだと思うんですよ。メジャーリーグであれば何倍もの高額な年俸をもらえたかもしれないけど、それよりも古巣の優勝請負人となることを選ぶ。当然、調整法や起用法などについて細かな取り決めもあっただろうと思います。まさにそれが元記事であったような待遇の話なわけですよね。

もとの話に戻って、多分ですが多少の年俸減は気にせず、国のために働きたいと思ってるスーパーエンジニアはいるとは思うんですよ。それに対して高額な年俸が支払えればそれは理想だけど、あれこれ事情があってそう簡単にはいかない。それとは別に待遇はどうだって話ですよね。せっかくやってきてくれたスーパーエンジニアに対して裁量も権限も渡さず、予算が無いと言って必要な機材やスタッフも用意せず、毎日どうでもいいような会議にひたすら呼び出し、ITに明るくない高級官僚や国会議員へのレクに忙殺させる、とかだったら全然報いてないですよねって話かなと思うんですよ。年俸が用意できないなら、せめてその能力を十分に発揮できる環境を用意しましょうって話なんですが、元記事をちゃんと読んでない人がこんなにたくさんいるんだなぁというのが悲しい話ですね。