目指してなれるとは限らない職業

2022/9/24作成

全国初の「17歳の大学生」になったが…早熟だった「物理の天才」が、いまトレーラー運転手として働くワケ

全国初の飛び級制度をつかって大学に入学された方のその後。神童は二十歳過ぎればただの人になりますが、この方は違ったようで、大学時代も、卒業後も専門分野で能力を発揮されたそうです。そんな方ですが、常勤の研究職に就くことは出来なかったというのはアカデミックあるあるなんですが、この方の凄いのは「世の中には、プロを目指してもなれない人はいる」として研究職に就くことを諦めてトラックドライバーに転身されるんですね。そうか、全然考えたこともなかったですが、研究職というのはミュージシャンや漫画家と同じように、目指したからといっても成れるとは限らない職業だったのか。

ここで適当に概算してみましょうか。全国に大学が1000あったとして、各大学の常勤教員が平均100人だったとします。全国で10万人の常勤大学職員がいるわけですね。大学教員の場合、一般には博士課程を卒業してからなりますから、就職するのは一般の職業よりも遅いです。仮に30歳からスタートするとしましょうか。60歳で定年退職すると30年間。10万人を30年で割ると、1年代当たり3000人ということになります。これが1学年あたり大学の常勤教員になれる数ですね。

一方志望者数はどうでしょう。1世代100万人いて大学進学率が50パーセントだと50万人。1割が修士課程に進学し、更に1割が博士課程に進むとすると、博士課程進学者は5千人。博士課程に進んだ人が全員学位とるわけではないけど、ここまでくると取る人は結構な割合だと思います。1学年あたり5千人がいて3千人が常勤教員になれるとしたら、かなりの高確率ですね。現実にはもっと難関だと思いますので、概算で挙げた数値のどれかに間違いがありそうです。

もう一つ、少子化で大学生の数も減って、それに合わせて大学教員の数も減ってポストが少ないのではないかなとも考えたのですが、これもイマイチ現状にあってなさそう。今後の長期的に見たらあってそうですが、現時点では大学進学率の伸びの方が大きくて大学生数自体は増えるか横ばいくらいっぽいですね。今後少子化がさらに進んでも、社会人や高齢者の学び直し需要次第で大学生数は増えるかもしれませんし。

ということで大学のポストに就くのが難しいという傍証を挙げたくて仮説を考えたのですが、イマイチな結果になってしまいました。実際の統計数値はどこかにあるでしょうから、気が向けば調べてみたいと思います。

それとは別に本題として。大学の常勤ポストがなかなか得られないってのはよくニュースになってますよね。多分こっちの方が実態として近そうな気がする。文科省の方針で博士が大幅に増やされたのにも関わらず、財務省の方針で国立大学の予算は削られる一方でっていう政策のミスマッチもあったんだと思いますが。文科省の思惑としては、一般企業で働く研究職や一般社員の高学歴化を狙っていたってのもあったと思いますが、その辺産業界とネゴが十分とれてなくて、産業界としては専門色に染まってない学部卒生を欲しがっているとかなんとか。

(2022/11/18追記)

ということで統計数値を探してみました。

まずは大学の教員数。文部科学省のサイトに1 設置者別本務教員数及び大学院担当教員数の推移という資料がありました。本務教員数の合計は昭和60年度の112,249人から一貫して増え続けて、平成18年度には164,483人となっています。この数字は講師と助手も含んでいますから、助教授以上のみですと約6万人から10万人程度。上記で10万人とした推測は結構合ってましたね。意外や意外。

次に博士課程進学者数。科学技術・学術政策研究所のサイトに3.2高等教育機関の学生の状況という資料がありました。こちらによると博士課程入学者は1980年代には4千人程度だったのが1990年代から急激に増加。2003年に18000人程度とピークを迎えましたが、その後も16000人前後で推移しています。こちらは私の推測値から大きく上方に外れていました。

結果として3000人の枠を16000人程度で奪い合ってるわけですから、そりゃ大学の常勤ポストはなかなか厳しいですよねぇ。求人倍率が0.2を切ってるって、どんだけ買い手市場なんですか。実際には大学以外にも研究施設はありますし、民間企業で研究所持ってるところもあるので、もうちょっと求人倍率は上がるんでしょうけれども、やっぱり狭き門ですよねぇ。今年無理だったから来年頑張ろうと言ったって、毎年新しい学生が同じ数だけ学位取って参戦してくるわけだし。