キャッシュレス決済手数料の話

2022/7/31作成

RTの案件。いろいろ備品の値上げがあることは打撃です。ただ個人的に厳しいと思っているのはキャッシュレス決済の手数料と入金までの時間です。
paypayやauPAYなどは拡大のため、手数料無料もしくは低いのでまだ耐えられるのですが、カードとsuicaは正直かなり厳しい。1https://t.co/RGuTkpBk8J

— 塚本浩司(PRINCE R.I.P) (@DJ_PRINCE_) July 27, 2022

一連のツイートでは、キャッシュレス決済の手数料が高いことで書店の経営が苦しくなっていると述べられています。これ、多分ですが書店に限らず小売店や飲食店など全てで共通の話ですよね。

ツイートではキャッシュレス手数料を5%、利益率が22%としていますが、この利益率って多分本の仕入れ値と売価の差のことですよね。実際には人件費、家賃、光熱費などなどの諸経費が入りますから、最終利益は数パーセント程度になると思われます。ここから売上の5%を持っていかれると利益が吹っ飛ぶか赤字になってしまう。

クレジットカードは古くからありますが、主に高額決済に使われてきました。書店などの日常使いの小売店では現金決済がほとんどだったわけですね。電子マネーも10年以上の歴史がありますが、売上のなかでの比率が少なかったから、これまではそこまで大きな問題になってなかった。でもここ数年でキャッシュレス決済の比率があがってきたことで、その手数料が経営を圧迫するようになってきたのかなぁと想像します。

キャッシュレス決済は何も小売店の敵では無くてメリットももちろんあるんですよ。現金過不足は撲滅できますし、両替の手間も省けます。近年は銀行での両替にも手数料かかりますしね。レジでのやり取りの時間も節約できますから人件費も削減できますしね。そうしたメリットもあるけれども、現時点では手数料の高さのデメリットの方が大きい。

クレジットカードは後払いですから、貸し倒れリスクの分だけ手数料が高いのはまだわからないでもないです。でもプリペイドの電子マネーの場合は基本的に貸し倒れリスクないですよね。にも拘わらず手数料が高いのはちょっと解せないですよねぇ。初期にはシステム投資がかさんでいてってのもあったでしょうが、現在ではそういうフェーズも脱してるでしょうし。この辺は政府が口出ししつつあるようなので、徐々に下がっていくことが期待できるかもしれませんが。それまで今の小売店が潰れないでいられるかってのはわかりませんが。

手数料負担が高くて辛いなら値上げをすればいいじゃないかって思う方もいるかもしれません。でもそれって難しいんですよ。ツイートであがっている書店は再販制度で売価が決まってますから、そもそも値上げできません。書店以外は価格決定権は商店にあるのですが、こういう消費者相手の商売ってすぐ近所に競合店がたくさんあるのが普通ですから、自店舗だけ値上げすると単に客離れを起こすだけになってしまう。テレビに出てる有名シェフのお店とかの唯一無二の価値を持ってるお店ならば価格は自由に上げ放題ですが、そうでない普通のお店にとっては価格とは神の見えざる手によって操作されて利益最低限のところに落ち着いてしまうわけですよ。キャッシュレス決済の手数料で厳しいのはどのお店も同じですから、長期的には徐々に値上げが行われるでしょうけれどね。

ツイートでは深くは触れられていませんが、キャッシュレス決済のデメリットとして現金化までの時間の長さってのもありますよね。多分、多くのキャッシュレス決済業者の振込は1カ月単位。店舗としては確かに売上としては立っているのだけれど、手元の現金がなくて辛くなってしまう。キャッシュフローが詰まってしまう、よくある黒字倒産のパターンですね。

小さな商店だと、今日の売上金を使って明日の仕入れをするなんてところもたくさんあります。教科書的にはしっかりと運転資金を確保しましょうということなんだけど、全ての店舗経営者が教科書通りの経営ができるわけではない。事実上の自転車操業でやってるところなんてたくさんあるわけです。

また、1か月分の運転資金って実際には結構えげつない額なんですよね。日商10万円の商店で半分がキャッシュレス決済だったとします。5万円×30日で150万円が来月にならないと振り込まれてこない。年商3000万程度の小規模商店にとって、150万円も常に運転資金として確保しておくのって大変ですよ。しかもこれキャッシュレス決済のためだけの運転資金ですから。人件費や仕入れなどの他の運転資金はまた別に用意しないといけないわけですからね。そんな余裕のある経営の出来てる小売店なんて、むしろ全体からすると少数ではないかという気がします。

もちろんキャッシュレス決済事業者だってその辺の事情はわかってますし、無策でもありません。月に複数回支払いをしてくれるところもあるようです。究極には毎日支払ってくれるのが理想なんですが、銀行振り込みだと手数料がとてつもなくなってしまので、そこまでするのも難しい。

これ、いっそのことキャッシュレス決済のプール金で仕入れできるようになるなんてのがいいのかもしれませんね。仕入れ業者も同じキャッシュレス決済業者を使っている場合に限られますが。もしくは、キャッシュレス決済業者を使ってる仕入先に乗り換えるでもいいですが。ソフトバンクとか楽天とかは、そういうことも考えてるんじゃないかなぁって気もします。まさにPayPay経済圏、楽天経済圏ですよね。これまでは消費者側にポイントで購入できるようにして囲い込みしてましたが、今度は業者側も経済圏で囲い込もうって動きがあってもおかしくないかなと思います。