直接金融にすれば景気はよくなるのか

2022/6/6作成

日本は莫大な個人資産がありながら、その大半が銀行預金という間接金融であるため、企業に資金が投資されないのが問題であると言われています。今ももちろん言われていますが、私がマネーゲームを始めた20年くらい前にも言われていました。多分私が知らないだけで、もっと前から言われてたんでしょうね。

えらい人がそう言ってるので間違いではないんでしょうが、疑問に思うこともないこともないなと思ったのでちょっと書き記しておきます。例によって、特に裏をとったわけでもなんでもなく、単なる自分の思いつきでしかありません。

一つは個人資産が莫大といいつつ、その大半は高齢者層が保有しているということです。そして、高齢者になるとリスク資産の比率は減らしましょうと言われていますね。リスクを取ることのできる現役世代は、直接間接関係なく資産をほとんど持っていません。ということは、高齢者に株式投資させようと言うことになるわけですが、それって適切なのでしょうか。

もう一つは、果たして現代の企業は投資資金を必要としているのでしょうか。大企業とはすなわち巨大な工場を建設して大量生産していた時代には、市場から調達する莫大な資金が必要だったでしょう。しかし、現代ではそうした二次産業の比率は下がってきています。主流はサービス業をはじめとする三次産業で、三次産業では人件費が最大のコストであって、高額な設備投資はそれほど必要なかったりします。また、あらゆる分野で自動化が進んでいますので、現在のサービス業を支えている人件費はどんどん減る傾向にあります。世界的に有名なネット企業なのに、従業員は数十人数百人程度ということも珍しい話ではありません。そういう時代において、直接金融に資金を誘導することは果たして適切なのでしょうか。

現代でもスタートアップはIPOを目指します。でもその目的は資金調達というよりも、創業者に富を還元したり、企業ブランド価値の増大に主眼が置かれているようにも思います。だって、事業資金はそれほど必要ないですもん。実際、いつだったかに読んだIPOした経営者のインタビュー記事で、調達した資金は使い道がないので、とりあえず社員全員にアーロンチェア買って、残りのお金は貯金しときますってのがありました。なんじゃそりゃって感じですよね。

もちろん、全ての企業が資金が不要なわけではありません。メインストリームではなくなりましたが、二次産業が消え去ったわけではありません。今でも巨大工場建設の資金は必要でしょう。また、パソコン一台で起業出来るとはいえ、産まれたばかりのスタートアップが資金が不要なわけではありません。とりあえず事業を軌道に乗せるまでの資金は必要です。でもそうした企業は株式市場から資金を調達できないですよね。だって上場してないですもん。そうしたスタートアップに資金を提供できるのはベンチャーキャピタルやエンジェル投資家ですから、本当に産業振興をしたいなら、こうしたスタートアップに資金が回るようにした方がいいですよね。株式市場に資金を回したところで、成熟して資金需要の少ない企業に余分なお金を持たせるだけのことでしかないわけですから。それでアーロンチェア買うようなことをされても意味ないですよね。