モバギ伝説

2022/3/1作成

モバギ、正式名称はモバイルギアと言います。1996年から2002年にかけて NEC が販売していた PDA です。PDA というのも現代ではもう忘れ去れられた単語ですよね。この頃に使われていた携帯用コンピュータの総称です。現代で言えばスマホやタブレットに近いのですが、通信機能が無いというのが大きな違いですね。

さてモバイルギアです。シリーズは複数の機種で構成されていて、形態的にはタッチペンで操作するタブレットタイプと、キーボードで操作するタイプがあります。ソフトウェア的にはMS-DOSタイプと、WindowsCEタイプがあります。ここでは主にキーボードタイプについて述べます。

この記事を書こうと思った理由は、私がかつてキーボードタイプのモバギを使っていてとても便利だと思っていたこと。そして、便利だと思ったポイントは現代でも十分に通用することを強く述べたいと思ったからです。要するに、モバギ的なハードもっと作って欲しい、もっとみんなが使って市場を盛り上げて欲しい、という布教目的ですね。

キーボードタイプのモバギの素晴らしいところは、フルピッチのキーボードを備えておきながら小型軽量であることと電源が長時間持つことです。これにより出先でも長文のテキストが入力できますので、ライターさん、作家さんなどにも重宝されていたと聞きます。これら専業の方でなくても、個人でブログの記事を書くのでも十分に使えます。というか、とても便利ですし、個人的にはモバギ的な機器がないとテキストの生産量がとても落ち込んでしまいます。私は個人サイトや同人誌でひたすらテキストを書いていますが、大半はモバギ的な機器を使って書いています。

一つ一つモバギの特徴を見ていきましょうか。まずフルピッチのキーボードを備えている事です。フルピッチでないキーボードを備えている端末は他にもあります。HP200LXであったり、BlackBerryであったりですね。パソコンを使い慣れている人にとってテキストを入力するにはフルキーボードが便利なのですが、これらの小型キーボードでは10本の指を使ったタッチタイピングが出来ません。それぞれ独特のタイピング法が発達していますので慣れれば高速にテキスト入力できるのでしょうが、慣れないうちは大変です。その点、フルピッチのキーボードを備えているモバイルギアの場合は買ったその日から高速にテキスト入力出来るのですね。

念のため補足しておくと、フルピッチキーボードを備えた PDA はモバイルギアだけではありません。カシオペアなどもありましたので、これらの機器でも同じように買ったその日から高速にテキスト入力できたのだと思います。ここは単に私がモバイルギアしか使ったことがないのでモバイルギアを取り上げているまでのことです。

フルピッチのキーボードを備えているのはなにもモバイルギアだけではありません。当然の事ながらノートパソコンも備えています。ならノートパソコンでもいいじゃないかいう話になるのですが、そこで問題になるのが重量と電源持続時間です。現代ではだいぶ軽量化が進みましたが、それでもノートパソコンの大抵の機種は1kg程度はあります。大きさもB5サイズが下限ですね。かつては Libretto という超小型ノートパソコンがあり人気がありましたが、これはフルピッチのキーボードを備えていませんので、キーボード的にはHP200LXなどと同じカテゴリに入り、モバイルギアや通常のノートパソコンとは別に分類します。

小型軽量モデルでも1kg程度の重量とB5サイズはあるノートパソコンに対して、モバイルギアは500g程度の重量とA4の縦半分程度と圧倒的に軽く小さくなっています。ノートパソコンを毎日持ち歩くことはもちろん出来ますが、重さも鞄の中でのスペースも大きく主張しています。プロレスラーやお相撲さんくらいの体格と体力があれば気にならないかもしれませんが、一般人にとってはノートパソコンはちょっとした荷物であることは確かでしょう。それに対してモバイルギアは半分程度の質量と大きさです。鞄に入れてもそれほどの主張はありませんので気軽に持ち運ぶことができます。なんならウェストバッグに入れることも出来ます。まさかと思うかもしれませんが、私がツーリングしてたときには実際にウェストバッグにモバイルギアを入れて持ち運んでいたんです。

そして電源の持続時間です。モバイルギアが活躍した頃のノートパソコンはバッテリーがせいぜい1時間程度しかもちませんでした。大容量バッテリーを使えば更に長く使うことが出来ますが、そのためには重いバッテリーを追加で持ち歩かなければいけません。それに対してモバイルギアの電源は単3電池2本です。たったこれだけで30時間も使うことが出来るのです。1時間しかもたないノートパソコンに比べたら圧倒的ですね。現代はバッテリー技術も進化しましたのでノートパソコンも10時間くらいは使えるようになりました。なので1日外出するくらいの用途であれば電源持続時間は問題にならなくなりましたけどね。

電源に関してはもう一つ。単3電池で動作するというのも大きな特徴です。今でこそ電源が使えるカフェがたくさんありますが、モバイルギアが活躍した時代にはそのようなものはほとんどありませんでした。出先でバッテリーが切れたらそこでアウト。現代では出先でも充電することは出来ますが、そのためにはACアダプターという荷物を一緒に持ち運ばなければなりません。また電源が使えるようなカフェは主に都会にしかありません。郊外などでは電源カフェはなかなか見つからないですね。それに対してモバイルギアは単3電池です。必要になればそこらのコンビニですぐに買えます。電源カフェが無い郊外でもコンビニならありますよね。それに予備の電池を持ち歩いたとしても、単3電池2本であれば荷物にもなりません。

このようにモバイルギアのキーボードモデルは素晴らしい特徴を備えていました。そしてその特徴は現代でも十分に通用しますし、代替となる機器は意外と存在しないのです。方法の一つはスマホやタブレットに外付けキーボードを接続することですかね。私はやったことはないのですが、モバイルギアの備えていた特徴はかなりの点でカバーできそうです。

そしてもう一つはキングジムのポメラ。そして実際に今私が使っているのも実はポメラです。DM100という機種をもう10年近く愛用しています。そしてこの文章も実際にポメラDM100を使って書いています。

ポメラはモバイルギアを参考にして作ったのではないかと思えるほど、モバイルギアの特徴を備えています。フルピッチのキーボードを持ちながら、重量は400g。サイズもA4縦半分。そして電源は単3電池。モバイルギアは汎用のコンピュータでもあったのでテキスト入力以外にも様々なアプリが使えたのですが、そういう機能はポメラでは削られています。でも用途はテキスト入力ですので十分なのです。

ということで、モバイルギアを褒め称えるはずがポメラを誉め讃えることになってしまいました。でもそれもしょうがないですかね。いくら褒め称えたところで、NEC がモバイルギアの新機種を出してくれるとも思えませんし。なのでここはキングジムに頑張ってもらってポメラを販売し続けてもらいたいところです。ならお前がどんどん買えばいいじゃないかと言われるかもしれませんが、ポメラって何台も必要になるものではないんですね。一人1台あれば十分です。壊れたら買い換えますが、なかなか壊れないんですよ。ということでこの記事をご覧になったあなた、ポメラを是非1台ご購入いただけますと助かります!