転職の偽陽性と偽陰性

2021/11/18作成

私は今は転職活動をしていないのですが、半年前は活発に行っていました。その時のことをふと思い出して一つ書き出してみます。

転職サイトに登録していると、自分で企業側に応募する以外に、企業側からスカウトが来ることもあります。スカウトが来るといっても、面接や内定確約というわけではなく、単にうちを受けてみませんか程度の軽いものですけれども。それでもまあ、登録した私のプロフィールを見て、こいつなら多少は使えるかもしれないなと思っていただいたのは事実ですね。

そうすると私はその企業のことを調べて応募するかどうか検討するのですが、自分の中で決めていた企業条件に合致しなくてスカウトを辞退することもあります。そりゃま当然ですね。スカウトされたからって絶対に応募しなきゃいけないわけでもありませんから。そこでふと思ったんですが、私が条件に合致しないからと辞退した会社には、単に企業情報の記載ミスや記載漏れで実は条件に合致していたとか、相談してみたら企業側が譲歩可能な条件だったという場合も々あるのかなという気がしたのです。だとしたらちょっと勿体ないことをしたのかもしれないなと、今更ながら思ったりもします。

これ、逆でも同じことを言えるんですよね。私が企業の求人に応募して企業側が書類審査をする。その時に企業の求める人物像に当てはまらないということでお祈りになってしまう。でも実は私がプロフィールにそのことを書き漏れていたりとか、実はその希望条件は調整可能だったりすることもあったかもしれないんですよね。

ここから言えることの一つは、企業側としても求人側としてもですが、断られたからといってそれを自分に対する絶対的な評価であると思う必要はないとういことです。実は詳しく聞いてみれば条件に合致していたかもしれないのに、単に書類上にそれが書かれていなかったか、誤読したり見落としたりしてた可能性も十分にあります。企業側も求人側も、それぞれたくさんの案件をこなしていますからミスもありますよね。実際、企業側からの不採用理由を説明されたときに、それ明らかな誤読ですからってこともありましたし。ですから、断られたからといってそこまで落ち込むこともないのかなということです。ええ、過去のお祈りされまくってた自分に対して慰めで書いてるんですよ。お祈りされると自分を否定された気持ちになってしまうけど、そんなことはないんだよと。実際にミスマッチだったこともあり得るけど、単なる書類不備やミスの可能性もあるんだよと。

そしてもう一つは、こういうミスが起こりえることは少なくとも企業側は織り込み済みなんじゃないかなと思うんですよ。擬陽性、つまりミスマッチな人材を誤って採用してしまう可能性があります。もう一つ偽陰性、つまり実はマッチしていた人材を誤って不採用にしてしまう可能性があります。どちらも企業にも求人側にも不幸なことですが、偽陰性よりも擬陽性を避けたいという思いが強いのではないのかなと思います。実際、ミスマッチな人材を採用してしまうと、企業側も大変な損害を被るわけですが、求人側も時間を一定量無駄にしてしまうという被害があります。個人の人生の時間が有限で取り返しがつかないことを考えると、求人側の被害の方が実は大きいとも言えますね。一方、実はマッチしていた人材を取りのがしてしまうリスクは、それほど大きくないのではないかなと。ぶっちゃけて言うと、人材に代わりは居るからです。今回マッチしていた人材を取りのがしても、また次の人材を探せばいいやと思える。求人側にしても同じです。今回不採用になったとしても、また次の企業を探せばいいのです。

これは言うまでもないですが、転職市場が市場と言えるほどの需要と供給に満ちていることが条件です。私が転職活動をしていた東京のITエンジニアはこの条件を満たしていました。地方に行ったら需要も供給もはるかに少ないでしょうし、伝統工芸のようにそもそも需要も供給もゼロに近いという場合もあるでしょうから、その場合は擬陽性と偽陰性の理屈は成り立たないかもしれませんね。また、擬陽性と偽陰性のロジックはあまりにもシステマチックな話です。企業と労働者の雇用関係だけを語るならシステマチックに、ドライになっていてもいいでしょうが、例えば伝統工芸における師匠と弟子の関係などであればもっとウェットな関係になることもあるでしょうね。その場合には偽陰性で切って捨てるということも簡単ではないかもしれません。