駅前商店街が衰退する理由

2020/11/20作成

例によって私個人が見聞きしたことについての覚え書きです。真面目に駅前商店街の衰退について調べてる方は、こんなページはとっとと閉じてまともな文献に当たることをお勧めします。

といういつもの予防線を一応張ったうえでの本題です。駅前商店街が衰退してるってよく言われてますよね。シャッター通りとか。その理由って、店舗兼住宅を自己所有してるからなんじゃないかと思ったんです。

昭和の頃の商店街にはこういう店舗よくありましたよね。1階部分が店舗で、2階部分が住居になっていて店主家族が居住してるという。職住接近の最たるものともいえますね。結果的に店主は家族総出で起きてる時間ずっと働かなきゃならなくなってって問題はありましたが、まあそれはおいておいて。

そして、全ての店舗付住宅がそうだったわけではないでしょうが、土地も建物も自己所有というものもそれなりに多かったと思うんですね。そして、その自己所有店舗不動産が現在の駅前商店街の衰退を招いているのではないかと。

昭和の頃によくあった形態ですから、その頃から最低でも30年は経過しています。かつては働き盛りだった店主も既に高齢者になっていて引退を考える頃でしょう。子供や従業員が店を継いでくれればいいのですが、今は大手資本のチェーン店などが幅を利かせてる時代ですので、個人商店を続けるのは正直難しい。店主が引退するのと同時に店を閉めるという決断をすることも多いと思います。什器などの設備も店主と同じく何十年選手で老朽化してますので、これを一新するコストもばかになりませんし。

こうして店舗が閉店するわけですが、これが賃貸店舗だったら賃貸契約が解約されます。大家がどうするかは大家次第ですが、駅前の商業地ですからやはり次のテナントを募集することもあるでしょう。無事に次のテナントが決まれば、駅前商店街としては店舗数が変わらず、賑わいも保つことができます。

しかし、これが自己所有不動産の場合はどうでしょう。もう何十年も所有してますからローンも完済してることでしょう。であれば店主家族にとって、この土地を離れる理由はありません。店舗付き住宅を解体し、ここに新たに戸建住宅を建てようという選択肢もあり得ます。土地は自前ですから費用がかかりませんし、なんといっても駅前ですから立地が便利です。

こうしてかつては商店が密集していた駅前商店街は、櫛の歯が抜けるように1軒また1軒と戸建て住宅に建て替わっていってしまいます。実際こうした「かつての駅前商店街」というのはあちこちで見かけますよね。店主個人の選択としては非常に正しいと思うんですよ。追加投資が少なく、便利なところに居住できるわけですから。しかし、駅前商店街自体であったり、地域にとっては果たしてこれは正解なのかというと微妙なところではないですかね。個人のミクロの利益と、全体のマクロの利益が相反してる状態。まあ、いろんなところでそういうことは起こってるわけですが。

「ナニワ金融道」に出てきた地上げ屋が、「細切れで価値のない土地をまとめあげることで価値を生み出してる。わしらの仕事は社会の役に立ってるんや」と言っていました。だからといって恫喝したりダンプで突っ込んだりすることは犯罪ですから正当化できないのですが、細切れの土地を集約すること自体は意義のあることだなと思いました。正当な手段で駅前商店街の土地を買い集めて商業ビルなどに生まれ変わらせる事業者が現れれば理想かもしれませんが、実際にはそんな手間と時間がかかる事業をするくらいなら郊外の広々とした土地を開発してショッピングセンターを作った方が効率的ですから、これからも駅前商店街の衰退は続くのではないかなと思うわけです。夢の無い話ですいません。