ドーム都市化する温泉旅館

2020/1/19作成

昨年のことですが、和倉温泉の加賀屋に泊まりました。おもてなし日本一で有名な温泉旅館ですね。さすが日本一は伊達ではなかったのですが、ここで書きたいのはサービスの話ではなくて、温泉旅館がドーム都市のようになってきてるなぁと感じたことです。加賀屋だけの特別な話ではなく、別の機会に泊まった温泉旅館でも同じようなことを感じましたので、日本中のあちこちの温泉旅館で近しいことは起こってるのではないかなと想像しています。

ドーム都市というと、SFでよく出てくる設定ですね。様々な事象から居住に適さなくなった地球環境から身を守るために、都市全体をドームで囲ってしまうというものです。最初から居住に適さない月面などに作られることもあります。ドーム都市では、基本的に外部に出ることはなく、住民はドーム都市の中だけで生活の全てを行います。このドーム都市と温泉旅館が似てるなと思ったんです。

どういうことかというと、温泉旅館の主な施設といえば客室と温泉です。食事は客室で行いますが、飲みに行ったり、劇場でショーを観たり、お土産物を買ったりといったことは通常は温泉街のそれぞれのお店で行います。が、加賀屋ではこれらの設備が全部館内にあるのです。結果として、私たちは夕方にチェックインしてから翌日チェックアウトするまで、加賀屋から一歩も外に出ることがありませんでした。まさにドーム都市のような環境で過ごしたのです。

おそらく昔は居酒屋なり劇場なり土産物屋なりの施設は温泉街に豊富にあったのだと思います。でも今は温泉旅館の館内でまかなえてしまう。温泉街が廃れたから温泉旅館の館内にこうした施設も取り込んだのか、温泉旅館が施設を取り込んでしまったから温泉街が廃れたのか。どっちが先だったかはわかりません。おそらくは両方の要素があったのだろうと思います。ともあれ、現実として温泉街は廃れ、かつて温泉街にあったであろう施設は温泉旅館の中に存在するようになっています。

地方は日本の将来像だとよく言います。私は普段は東京に住んでいるので、正直日本の衰退について実感する機会はほとんどありません。でも現実として、日本は人口が減少し、少子高齢化が進み、経済も衰退していこうとしています。東京ではまだ繁栄に覆い隠されている衰退が、地方では実際に始まっているというわけです。その地方の一つが和倉温泉のある七尾市だとして、ドーム都市化した温泉旅館はさらにその先を行くつの将来像なのかもしれないなと、繁栄する加賀屋館内と、対照的に寂れてしまっている温泉街を眺めながら考えました。


あおやぎのさいと2.0 トドの日記2.0