芸能人が犯罪を犯して作品が非公開になること

2019/3/17作成

特定の人をおとしめたいわけではないのですが、具体名を書いておかないとあとでなんのことだったかわからなくなってしまうので、一応書いておきます。 ここ最近ですが、ピエール瀧さんが覚醒剤を使用して逮捕されました。 また少し前ですが新井浩文さんが強制性行を行ったとして逮捕されました。 お二人とも多くの映画やドラマに出演されていて、その作品が現在撮影中や公開中のものだけではなく、過去の作品も含めてお蔵入りになるということが話題になってます。

個人的には過去の作品については非公開にする必要はないんじゃないかなぁとは思います。 撮影中の作品は逮捕されていてそもそも撮影続行できないので代役を立てなければならないのは仕方がないですし、これから公開するものは大々的に宣伝することと当人の捜査が進行中ということを考えると微妙なところではあります。 起訴されて刑が確定するまで公開延期くらいが妥当なところかなとは思いますが、時期を狙った作品の場合はそうもいかないですしねぇ。

ただ、ここで書きたいのは作品の公開非公開の是非ではないんです。 ネットで多く見かけたのが「被害者が居ない犯罪なら非公開にする必要がない」という意見です。 被害者の有無が、公開非公開の判断の基準になるという意見です。 これがすごい違和感があった。

被害者が居るなら非公開という意見の根拠は、たとえば新井浩文さんの作品をレイプ被害を受けた女性が鑑賞したら辛いだろうというところにあります。 そりゃ辛いですよね。 大変なことだとは思います。 ただ、言っては何だけどたった一人の見ない権利を守るために、他の多数の人に対して作品を見る自由を奪うことに合理性があるのかというと、それははなはだ疑問ではあります。 また、被害にあった女性もわざわざ自分から新井浩文さんの作品を見ることもないでしょう。 テレビを見ていて偶然に見てしまうという可能性はあるので、テレビから排除するのは仕方がないかもしれません。 でも、DVDなどのパッケージ作品すらも排除するのは行き過ぎではないかと個人的に思います。

もう一つ、被害者が万一視聴するかもしれないという理由は、殺人事件であれば過去作品を非公開にしなくていいということになってしまいます。 でもそれってどう考えてもおかしいですよね。 なので、被害者が視聴するかもしれないというのは過去作品を非公開にするための基準としては不適切だと思います。

ただ、ここではもう一つ観点があるかなと思います。 新井浩文さんが出演する作品を見た人は、今後はこの人は性犯罪者だと思って視聴しますよね。 その役柄が聖人君子だったとしても、でも演じてるこの役者は性犯罪者だよなと思うとしらけてしまうでしょう。 逆に犯罪者を演じていたとしても、それは迫真の演技などではなく、しゃれにならない映像になりますよね。 新井浩文さんの場合は性犯罪ですから、多くの女性視聴者は拒否感をもつでしょうし、男性だって拒否感を持つでしょう。 新井浩文さんの出演した作品は今後は視聴に耐えられないという意味で商品価値が激減してしまっている。 そういう意味で出荷停止をすると言うのならわかります。 コンプライアンスの問題ではなく商売上の理由としてね。 それでも気にしないという人のために販売は継続して欲しいですけどね。

近しい話として、東日本大震災が起きた時に、竹熊健太郎氏が「これで"崖の上のポニョ"は地上波で放送できなくなった」とおっしゃってました。 確かに、クライマックスで大津波の描写のある作品を東北地方で放送したら大変なことになるでしょう。 東北地方以外でも違和感嫌悪感を感じる人は多数いると思われます。 と思ったんですが、震災直後は自粛されたものの、その後は何度か地上波で放送されてるようですね。 もちろんパッケージは現在でも問題なく販売されています。

今回、役者さんなどから「役者ではなく作品を見てください」という意見が出されているようです。 それはそれで正論なのですが、では役者をいっさい排除して作品だけを見れるかというとそういうわけにもいかない。 本当に役者を無視していいなら、役者さんは全員マスクをして演技してもいいことになるけど、それはさすがに無理がある。 実際のところとして、視聴者は役者個人も作品の中に投影して視聴するわけです。 キムタクが演じる役は全部キムタクになってしまうという話がありますが、それ自体は仕方がないし、作品を売る側も役者個人の商品価値を期待して売ってる面もあるわけで、ここで役者は関係なく作品だけをと言ってもそれはダブルスタンダードにすぎるかなと思います。

もう一つ。 ピエール瀧さんの場合は直接の被害者が居ないから過去の作品は非公開にする必要はないのではないかという意見に対して、麻薬はその生産や流通のために多数の被害者を出しているので被害者が居ると言う意見がありました。 それはさすがに無理筋な理屈じゃないかなぁと思います。 覚醒剤生産に関わっている被害者がいるのは事実だとは思いますが、その被害者たちはピエール瀧さんの過去出演作がこれまで通り公開されることで傷つくのでしょうか。 ピエール瀧さんの過去作品が出荷停止になることで、救われるのでしょうか。 どっちもあり得ないことですよね。 なので、麻薬生産国の被害者とピエール瀧さんの過去作品の公開非公開を関連づける必要はないと思います。 念のために補足しますが、麻薬生産国の被害者を放置していいとは言ってませんよ。その救済は救済で別途行う必要のあることです。