QRコード決済がなぜもてはやされるのか

2019/1/17作成

なぜ今更QRコード決済が流行ってるの?

リンク先は、せっかく日本ではSuicaを始めとする非接触ICカードの電子マネーがすでに普及してるのに、なんで今更劣化技術であるQRコード決済がもてはやれてんの?という疑問。

これ私もほぼ同じことを常々考えてまして。 自分自身がQRコード決済を使ったことがないのでその便利さがわからないこともあり、ずっともやもやしてたのでした。 ということでちょっと調べたりしてみました。

ICカード電子マネーに対するQRコード決済のメリットは、なんといってもコストの安さでしょうか。 クレジットカードもそうですが、ICカード電子マネーも端末が結構な値段がします。 それに加えて決済ごとの手数料も結構高いです。 契約によって差はあるのでしょうが、端末が数万円、決済手数料が5%くらいですか。 ぎりぎりの利益でやってる小売店にとっては、このコストは厳しいですよね。 キャッシュレスが十分に普及した時代なら現金を取り扱うコストが削減できるという考え方も出来ますが、現状では現金と併用しなければならないわけで、単純にコスト増になってしまいますね。

QRコード決済のもう一つのメリットは、個人間決済にも使えること。 ICカード電子マネーに対するよくある苦言として、割り勘が出来ないというものがあります。 確かに出来ませんね。 友達と飲みに行って割り勘するためだけにICカードリーダーを購入することは出来ませんし、そもそも個人が契約できるとも思えない。 一方、QRコード決済なら個人間決済が可能なので割り勘出来る。

個人間決済というのは割り勘にとどまらず、かなり幅広い範囲で行われています。 子供の小遣いもそうですし、IT勉強会のような一夜限りのイベントとかでもそうでしょう。 フリーマーケットや同人誌即売会の決済だってICカードリーダーを用いるのは非現実的です。 よくあるQRコード決済の例として、ほんとかどうかわかりませんが物乞いの人も利用しているとか。 要するに、小売店で買い物する以外にも、実は様々なシーンで我々は決済を行っているわけですね。 そのすべての決済をICカード電子マネーで行えるようにするというのは確かに現実的ではありませんので、簡易的で低コストな決済方法が必要というのも理解できます。 こうした個人間決済が普及すれば、ウェブ投げ銭とかも実現できそうですしね。

ということでQRコード決済の必要性が理解できたのですが、それで私が感じてた違和感の正体も分かりました。 現状、日本でQRコード決済を用いているのってほとんどが小売店なのですよね。 本来ならこうした小売店ではICカード電子マネーやクレジットカードを用いた決済が主流になるのが筋だと思うのに、より簡易的なQRコード決済に偏重してるというのが私の感じてた違和感なんだと思います。 小売店がQRコード決済を好むのは、それは要するに掛かるコストの問題なので、ICカード電子マネーやクレジットカードの決済が今より低コストで出来るようになるといいのになぁと思いました。

(2019/1/18追記)

QRコード決済を使ったことがないのに、セキュリティが気になったので追記しておきます。 自分で試してみればわかることもあるはずなんで、やってみようと思いつつもなかなか手が出せてない抜け作です。 すんません。

QRコード決済には主に二つの方法があります。 ひとつは、店舗側が商品のQRコードを表示し、購入者が自分のスマホの決済アプリでQRコードを読み取るもの。 もう一つは、購入者がスマホの決済用QRコードを表示し、店舗がQRコードを読み取るもの。

前者で気になるセキュリティは、QRコードの提示する金額が本当にその商品のものなのかということです。 これは100円です、決済にはこのQRコードを読み取ってくださいと提示されたものは200円のQRコードだったとして、人は決済前にQRコードを見て確認することができません。 決済アプリがQRコードを読み取ったあとに、この金額でよろしいですかと確認を求めてきたらこの問題は解決しますが、そうすると決済に手間がかかるようになりますよね。 実際のところどうなんだろう。 事前確認がなかったとしても、決済後に今回は何円でしたという表示はされるとは思います。 そこで金額が違ったら店員さんに指摘して訂正してもらえればいいのですが、それは有人店舗の場合。 自動販売機のような無人店舗だったらそうはいきません。 野菜の無人販売所にあった100円と掲示されたQRコードが決済したら1000円だった場合、どこの誰に言えばいいのでしょう。 100円おめぐみくださいという物乞いの人がQRコードを首から下げていたので決済したら1万円引き落とされてしまった。 物乞いの人を問い詰めても、多分返してくれませんよね。 決済後の一定時間内なら決済を無条件で取り消せるというようにする方法もありますが、ジュースの自動販売機でそれをやられると、ジュースを手に入れて決済をキャンセルとか出来てしまう。 うーん、そうするとやっぱり決済前に確認ボタンしかないのか。 なんかいけてないなぁ。

後者の場合で心配なのは、表示されるQRコードはトランザクションIDを含みますよねということ。 ユーザIDだけだったとしたら、QRコードを盗み見て別のところで決済し放題になってしまう。 これはトランザクションIDを含んでおいて、一度決済に使用されたトランザクションIDは二度と決済できないようにすればいいだけなので、そうなってると期待するのですが。 それでも、決済しようと表示したけどやっぱりやめたというような場合に問題が残るので、QRコードには時刻も入れておいて一定時間経過後には無効になるような処理も欲しいところですね。

もう一つ別の話。 元増田で国が決済端末を配ればいいというアイデアを否定する意見を多数見かけましたが、考えようによってはそれもありではないですかね。

国策としてキャッシュレス決済を推進したいなら、そこに補助金を投入して誘導するのはどんな分野の政策でもある話です。 問題のある税金の使い方でもありません。 場合によっては、国が音頭をとって決済基盤を構築したりしてもいいですよね。 もちろん、どのような決済方法が適切であるか、どの事業者に対して補助を行うかといった議論は必要なのは当然として。

また、考え方によっては現金決済というのは国が補助金を出して運用してる決済手段ともいえるんですよね。 現金決済を行うにあたって、登録は必要ありませんし、登録手数料をとられることもありません。 現金で決済するときに、決済手数料を国に払うこともありません。 これらの手数料は国が補助して、現金決済という決済手段を普及させているとみなすこともできるかと思います。

現金と電子マネーはを一緒にする奴があるかという指摘もあるかと思います。 経済学的には現金は市場をコントロールする手段ですし、政治学的には通貨の発行は国の主権行為の一つです。 ただ、現実として民間企業が電子マネーやポイントを無秩序に発行することで、こうした国の主権が脅かされているという指摘もありますよね。

(2019/1/24追記)

この件で気になってるのは、話の構図がガラケーとスマホの時に似てるなぁという気がしてるところです。

日本では1990年代末から2000年代にかけて、独自に進化したガラケーがありました。 単なる携帯電話から出発して機能強化し、多機能なモバイル端末として発展していました。 機能的には現在のスマホと比べても遜色なかったり、一部には未だにスマホでは実現できてない機能などもあったほどです。 もちろんスマホの方が勝ってる機能もたくさんあるんですけどね。

ともあれ、機能的にガラケーはスマホに劣った存在ではなかった。 ところが、iPhoneが発表されてスマホが普及していくと、人々はガラケーを古くて劣った製品だとしてけなしはじめました。 日本で作られたガラケーなんてくだらないものに違いない、海外で作られたスマホは素晴らしい、という調子です。 ちょっと被害妄想入ってますけどね。 でも、そうやってスマホ礼賛してる人たちは本当にスマホとガラケーを機能比較したんだろうか。 本当に比較してその結論に達するのか、というのは今でも疑問です。

かつて日本には舶来品信仰がありました。 日本がまだ後進国であって、国産品が劣った製品であった時代です。 いまでこそ国産品というのは高品質の代名詞ですが、その頃は国産品は二流三流の蔑称だったのです。 もしかしたら、日本人のメンタリティにはその頃の舶来品信仰が残っているのかなぁという気がしないでもない。

キャッシュレス決済についても同様です。 非接触ICカードというキャッシュレス決済のシステムがすでに存在し国内でもそれなりに普及しているのに、昨年の後半からの経済誌には日本は未だに現金決済を行っている後進国でありキャッシュレス決済先進国の中国を見習えといった記事が多数踊っていました。 すでに日本には10年以上前からキャッシュレス決済システムがあって利用されているというのに。 それでいて、日本のモノヅクリは終わったとか、メーカーや技術者はなにをしているんだと非難されましてもと思ってしまうのは被害妄想ですかね。

まあ、海外のものを素晴らしいと盲進するのもわかりますし、マーケティングや広告で素晴らしいと感じるというのもそれも人間です。 ただまあ、私としてはそういう表面的な感情だけではなく、もうちょっと実際のところを知って比較したいなぁと思うところなのです。

(2019/2/22追記)

相変わらずQRコード決済を使ったことのない私ですが、最近スマホを使ったアンケートを利用しました。 スマホでアンケートに回答し、最後に回答内容がQRコードとして表示されるのをスタッフの方が読み取って回答完了するんですね。 ですが、これがなかなかQRコードが読み取れない。 スタッフの方がコードリーダーをあっちこっちに傾けたり近づけたり遠ざけたりと散々苦労した挙句にようやくなんとか読み取り完了しました。

人間の目にはスマホの画面に表示されたQRコードってのは白黒がはっきり見えるわけですが、QRコードリーダーにとってはそうではないってことなんでしょうね。 QRコードリーダーってのは紙に印刷されたものを読み取ることが本来の機能なんで、スマホの画面に表示されたQRコードってのは目的外なんでしょうかね。 QRコードリーダーはLEDを照射してその反射をフォトセンサで読み取るわけですが、スマホの場合は液晶表面でLEDが強く反射してしまってフォトセンサの読み取りレンジを外れてしまうのかなぁとぼんやり想像しますが、実際のところはどうなのかはよく知りません。

ただ、スマホのQRコードを読み取るのって意外と大変だったりするんだなぁというのがこの時の経験。 レジで支払するときに同じように手間取ったら、非接触ICカードはもちろん現金支払いよりもよほど時間がかかってしまう。 ということで、スマホ決済が普及するにはQRコードリーダーの改良も必要なのかなと思った次第。 多分、実際にはスマホ対応型のQRコードリーダーもすでに販売されてるんでしょうけれども、普及するのには時間かかるんでしょうね。

(2019/3/29追記)

QRコード離れを起こす中国のキャッシュレス決済事情|中国

このような記事がありました。 昨年の後半くらいからはQRコード決済を礼賛する一方の記事ばっかりだったのに対して、ようやくカウンターの記事が出るようになってきたのかなと思います。

この記事を読んで一つ勉強になったのは、お店が表示するQRコードには金額が含まれていないこと。 私はここに金額が入っていて、詐欺的に大金をせしめることができるのかなと思っていたのですが、そうではなかったのですね。 何事も使ったことがないもののことはわからないものですね。

もう一つ。 ユーザがスマホで表時させるQRコードにはトランザクションIDは入ってないようですが、時刻データが入っていて一定時間経過後には無効になるようです。 それはセキュリティの点では一つセキュアにはなっているのですが、実際のところとしてはリンク先の記事にあるように、QRコードを盗み見して悪用決済をするのには一瞬でできてしまうので、時刻データは事実上役に立ってないわけですね。 これはどうにも防ぎようがない。 せいぜいが、覗き見防止シートのようなものをスマホに貼って自衛するくらいしか手段を思いつきません。

この記事を読んで思ったことがもう一つ。 偽造QRコードをこっそり貼って集金する手段がはびこっているようですが、これについては改善方法があるのではないかと思いました。 というのは、QRコードってかなりの情報量が埋め込めるので、短めの鍵長なら認証コードを埋め込むことができると思うんですね。 決済データを秘密鍵で認証したコードと一緒にQRコードにしておくと、サーバ側でQRコードが正規の業者から発行されたものかどうかをチェックすることが可能です。 詐欺師は詐欺師の秘密鍵で認証したコードをQRコードに埋め込むことができますが、そのQRコードからは発行者が誰であるか確認することができますので、商店や駐車違反取り締まりでないことを確認することができます。 これは多分技術的に可能なので、近い将来にQRコード決済に組み込まれるのではないかと思います。

(2019/8/22追記)

中国QR決済事情

この記事を読んですごく腑に落ちたというか、QRコード決済というのがどういうものかというのが理解できたといいますか。

QRコード決済は最初はチャット上の送金機能だった。LINEでスタンプを貼るように、お金を貼る。そうすると相手に送金される。もともとはそういう機能だった。そこにはQRコードなんて存在しない。

そういう送金機能があったところに、お店を友達にすれば少額決済にも使えるんじゃないかというアイデアが出た。お店を友達に加える時、いちいち店名で検索したりするのは面倒なのでお店のコードを入れたQRコードを読んでもらうようにした。これがQRコード決済。なるほどな、そういうことだったのか。QRコードは技術の肝でもなんでもない。どちらかというとSNS決済とでも呼んだ方が実情に近いのではないだろうか。