リサイクルを中心にして廃棄物問題の現状について解説した本。現状と言っても出版されたのは1993年。ずっと昔の話やんと笑い飛ばせればいいんだけど、実際にはそんなことは全然無く。本書で指摘されている事項はそのほとんどが現代でもそのまま問題としてあてはまってしまう。本書から現在までの間にリサイクルに関する法制度はいくつか整備されはしたが、根本的な問題が解決しているとは到底言えない。14年も前から分かっている人にはとっくに分かっている問題が、なかなか解決出来ないというのは、それが社会の仕組みとはいえ、歯がゆいものがある。
本書で指摘されているなかでなるほどと感心したのは、
- 生産する企業が廃棄コストを負担しないので生産を抑制するインセンティブが働かない。方法としては生産に環境税などを課せばいいのだろうが、その導入は果てしなく難しいだろう。
- リサイクルすることによって消費者にも消費に対する免罪意識が発生し、消費を抑制しなくなる。
- ボランタリーな回収活動により、むしろ回収業者が被害を受けている。結果、廃品回収システムが崩壊している。
などがあった。
ところで一つ疑問が残った。本書でも書かれていたし、1990年代には盛んに言われていた事に「最終処分場があと数年でいっぱいになる」という話があった。報道番組ではゴミを満載した輸送船が引受先が無くて海をさまようというショッキングな映像を流して問題をあおっていた。その数年の期限はとっくにすぎて2007年を迎えているわけだが、今に至るまで処分場が無くなってしまったという話は聞かない。結局どうなったんだろうか。リサイクル活動や分別収集により、処分場が延命できたんだろうか。新たな処分策が講じられるようになったのだろうか。