「アメリカ細密バス旅行」城山 三郎

2007/4/12作成

自分でツーリングレポートなどを公開しておきながらなんですが、実は私は他人の旅行記のたぐいを読むのがあまり好きではありません。なぜかというと、旅行記は必然として日時と地名と移動ルートの説明がどうしても出てくる。こればっかり読んでるのが詰まんないんですよね。自分がよく知っている土地ならともかく、知らない土地の地名のオンパレードではイメージがわかない。ということで、この本も旅行記として日時と地名と移動ルートの連続で、その点ではあまり面白くなかったんだけど、それでも収穫がなかったわけではない。

この本は筆者が1970年頃にアメリカを旅行した記録である。その頃のアメリカのリアルな様子が記録されているんだけど、それだけなら単なる記録でしかない。面白いのは、そこで描かれるアメリカが、退廃、浪費、伝統の破壊、若者の無気力化など、ある意味現代の日本でそのまま通用しそうな事が多数書いてある。これはつまり日本は40年掛かってようやくこの頃のアメリカに追いついたとも言えるし、アメリカは40年前に既にそんなところを通過していたとも言える。40年前の日本と言えば私はちょうど生まれた頃だけど、高度成長期で経済発展はしていても、実際にはまだまだ貧しかった時代なわけで、やっぱりアメリカってすごいなと素直に私は感心した。

ところで、これも旅行記というか旅行の必然ではあるけれど、筆者の城山三郎氏は徹底的にアメリカを他人視点で見て記している。敗戦からまだ日が浅いという時代背景を考えると、アメリカの様子を探り、その繁栄の源を探ってやろうという気もあったのかもしれない。私は自分がかつてロングツーリングをしていたころ、それが寂しかったことがある。旅先で出会う人や場所は時にとても魅力的なんだけど、旅人である自分はあくまでエトランゼであり、その魅力的な世界には入っていくことが出来ないのである。城山氏はそれをどう感じたんだろうか。