「無人島に生きる十六人」須川 邦彦

2007/4/4作成

痛快。めちゃめちゃおもろい。この本自体は昭和初期に刊行された後、埋没していたのを椎名誠氏が発掘し再刊にこぎつけたとのことである。素直に、発掘し再刊に尽力した椎名氏に感謝したい。こんな面白い本を再び世に出してくれてありがとう。

本書は明治31年から32年にかけての航海と漂流記を、漂流船の船長からの聞き伝えという形で筆者が昭和16年から少年クラブに連載したものだそうである。本書内容がフィクションかノンフィクションかというのは分からないが、椎名氏達がが当時の新聞記事などを調査した結果、少なくとも漂流事件があったこと自体は事実らしい。少年クラブ掲載にあたり、脚色などはあったかもしれないが、それは些細なことだろう。少年向け小説ということで文章が平易で漢字が少なめなので少々読みにくくはあるし、時代背景を反映してナショナリズムに走った表現が見受けられたりというのも気にはなるが、それも些細なことだろう。とにかく、読んでて痛快で、久しぶりに読書の楽しみを体験できた。