売るか、貸すか

2005/11/13作成

終の棲家と思って買ったマンションでも、転勤や家族構成の変更などでどうしても住み続けられなくなる場合があります。空家にしておけるならいいんですが、普通は次の住居との2軒分のローンもしくは家賃を負担しきれないでしょう。そうした場合、貸すか売るかという事になるのですが、その判断の基準はどこに置いたらいいのでしょうか。考えられる条件はいろいろあります。数年で戻ってくるのかどうかとか、残債があり過ぎて売るに売れないとか。貸した場合に賃借人とのトラブルが怖いとか、借り手がつかないというリスクもあります。今後数年で絶対に不動産が上がる/下がるという予測をしていてそれに従うというのもあるでしょう。

それらさまざまな条件を考慮しても、それでも売るか貸すか決めきれないという場合、次のような考え方もあるのではないかと思います。それは、貸した場合と売った場合のトータルリターンを比較するという方法です。なお、これはあくまでも仮定の話ですから、絶対にこういうリターンの関係になるとは限りません。また、不動産自体の価値の変動によっても簡単にひっくり返ります。あくまでも、参考のひとつとして捉えてください。

ここで考えるのは、売買相場と家賃相場の経年変化です。どちらも築年数が経つほど下がっていくのですが、その下がり方は一定ではありません。一般に、売買価格は築浅の時期に一気に下がって、あとはなだらかに下がる傾向にあります。一方、家賃は時期の影響をそれほど受けず、じっくりと下がっていく傾向にあります。

新築時3000万円の物件を考えてみましょう。解体までに50年居住可能で、解体時に1000万円の残存価値があったとします。その間の売買価格の変動は3000万-sqrt((1-(50-(経過年)*(50-(経過年)/(50*50))*2000万円だったとします。ややこしい式ですが、これは楕円カーブを描くという仮定です。一方、家賃は新築時で15万円/月。50年後で5万円/月とします。この間、家賃の変動は一定で(15-(経過年)/5)万円だったとします。このとき、ある経過年において売った場合と貸した場合のトータルリターンは次の通りになります。なお、貸し出した場合には50年後の売却価格1000万円を加算しています。

経過年 0年 5年 10年 15年 20年 25年 30年 35年 40年 45年 50年
売却価格 \30,000,000 \21,282,202 \18,000,000 \15,717,143 \14,000,000 \12,679,492 \11,669,697 \10,921,216 \10,404,082 \10,100,251 \10,000,000
総家賃+最終売却価格 \70,600,000 \61,840,000 \53,680,000 \46,120,000 \39,160,000 \32,800,000 \27,040,000 \21,880,000 \17,320,000 \13,360,000 \10,000,000

この表から考えるといつであろうとも貸した方が得という事になります。もちろん、これはあくまでも仮定の話です。売却価値が試算通りに減っていくとは限りませんし、家賃相場だってそうです。50年後の残存価値は高く見積もり過ぎでしょう。また、50年後の残存価値はほぼ土地のみですから、定期借地権の物件の場合は当てはまりません。貸した場合にはトラブルの他にも、固定資産税や家賃に対する所得税が発生し納税の手間が掛かります。普通に考えたら、素人が変に家賃収入を期待するよりは、面倒を恐れて多少損でも売ってしまった方が利口ではあると思います。また、売った場合はその場で全額が手に入りますが、貸した場合は当面は家賃しか手に入りません。即座にまとまったお金が必要なら売るしかありませんし、また数十年という期間を考えると、その間の運用利回りも考慮に入れないといけません。

余談ですが、最初から貸しに出した場合の総家賃はすごいですね。販売価格の2倍強ですか。これ見ると不動産投資をいっちょやってみるかという気にもなってきますが、これが50年間の総計であるという点にご注意ください。年利に換算しますとわずか4.71%です(単利換算)。複数の物件を管理していたり、他にも収入があって節税対策とかでない限り、庶民が不動産投資を行うのは割りにあっていないと思います。


あおやぎのさいと2.0 マンション談義