修繕積立金の負担割合

2005/10/15作成

修繕積立金の負担割合と言っても住戸間のではありません。特定住戸の時間軸での負担割合の事です。

新築から50年間居住されて解体されるマンションがあったとします。住戸あたり、新築時から建物解体まででトータル1000万円の修繕費用が掛かったとします。この住戸がずっと一人のオーナーだった場合には負担割合は気にする必要はありません。お金の出所はひとつですから。では、築20年目の時点で転売されたらどうでしょう。最初の20年とあとの30年でオーナーが違うわけです。このとき、修繕費用の負担はどうなるのが適当なのでしょうか。単純に期間で割れば400万円と600万円ということになりますが、それで妥当なんでしょうか。

実際の修繕工事は築年数が経過した方が費用が掛かりますから、単純に所有年数に比例させるのはおかしいような気がします。積立金は一切なくして、修繕工事を実施した時にその時点でのオーナーに費用を負担させると言う考え方は非常にシンプルで分かりやすいですが、修繕の原因となるマンションの劣化は日々少しずつ起こっているわけですからやはり不公平であるとは思います。個人的には、年数が経過するに従って負担割合を大きくしていくのが望ましいとは思いますが、ではどれくらいの割合で増やしていくのがいいのかというと難しいです。

現実には、毎月積み立てる修繕積立金は年々少しずつ増えるようになっていますから、築年数が経過してからのオーナーの方が負担割合は大きくなります。しかし、多くのマンションでは大規模修繕工事の実施時には一時金を徴収しますから、負担割合は単調増加するわけではありません。極端な話、大規模修繕工事が行われる1年だけ所有したオーナーがいた場合、とても所有期間に応じたとは言えない過大な負担をすることになります。

もちろん、負担割合を完全に公平にすることは不可能です。例に挙げた修繕費用がトータル1000万円というのも、マンションが解体された後になって初めて分かる金額です。それを居住している時に知る方法はありません。

また、負担割合の不公平は転売時の価格に反映させることによって解消される可能性もあります。過大に負担された状態の住戸であれば、購入後の修繕費用負担が軽くて済むわけで、その分転売価格が高くなるという考え方です。中古自動車の売買で車検前後で価格が変わるようなものです。そうであればいいんですが、実際の中古マンション市場で修繕積立金の負担状況が考慮されているとはとても思えません。逆に言えば、修繕積立金の負担状況をうまく使えば、実質的に割安で中古マンションを購入できるという事でもありますが。

完全に不公平を無くすことは出来ませんが、一時金は不公平を増大させているのは間違いないと思います。出来れば、一時金は全廃して修繕積立金のみで修繕費用をまかなうのが良いと思います。ただし、新築時の積立基金だけは難しいところです。この一時金を徴収しないとマンションの初期には修繕費用がほとんど無いことになります。ほとんどの場合はそれでも問題ないでしょうが、築浅の時期に修繕工事がどうしても必要となったときに困ることになりそうです。

ところで話は少し変わりますが、最近株式市場では過大な利益を留保している企業の株を購入して、株主総会で配当を迫る株主と言うのが話題になっています。これと似た構図で、修繕積立金が過大にあるマンションを購入して分配を要求するなんて事をすれば、もしかしたら大儲け出来るのかもしれません(^^)。マンションの場合、修繕積立金を分配できるのは実際には解体されて管理組合が解散するときくらいでしょうから、現時点では積立金が過大なマンションはまずあり得ないとは思いますけれど。将来的には使える手かもしれませんよ。