分譲マンションは不要か

2003/6/13作成

とあるマンションに関するコラムで「将来的には分譲マンションは無くなって、全てが賃貸マンションになるのが理想的である」という論を見かけました。

この論にはある程度の合理性があり、納得できる部分もあります。分譲マンションは区分所有という特殊な所有形態を採っている為、マンション管理に余分な手間が掛かります。合意形成の難しさからマンション管理が行き届かなくなる可能性も高いです。区分所有者自身もマンション管理には必ずしも明るくないため、良いマンション管理を実現できるとも限りません。専門知識を持ったオーナーがマンションを建築して管理し、住民は家賃を払うだけでマンション管理にはノータッチというのはある意味理想的な環境かもしれません。しかし、私はやはり分譲マンションはあった方がいいと思います。

その理由の一つは、賃借人とマンションオーナーはマンションについて利害が対立する関係にあるからです。オーナーから見れば、コストを削った劣悪なマンションを高い家賃で供給すれば利益が増大する事になります。しかし、そんなマンションに住む事は賃借人の利益にはもちろんなりません。自由競争の社会ですから、劣悪なマンションオーナーは市場原理によってある程度淘汰されるでしょうし、法律の面からも良質なマンション供給を後押しするようになってきてはいますが、この利害の対立を解消しない限り、根本的な解決にはならないと思います。

次の理由は、住民は自らマンション所有者となる事によって、よりよいマンションについて関心を持つきっかけになるからです。この点は特に自分自身にとって重要でした。例外もあるでしょうが、一般的には人間は自分の所有物でないものにはそれほど興味を持ちません。逆に所有する事によって関心を持つようになるものです。私も、マンションを購入する事によって、これまで興味を持たなかった多方面について興味を持ち、勉強するきっかけになりました。良いマンションに関心を持つ人が多くなるという事は消費者の見る目を育てる事になり、結果として世の中のマンションの質の向上に繋がる事になります。

最後に挙げるのは、分譲マンションは極論すると民主主義である点です。一方、ワンオーナーによる賃貸マンションは独裁主義です。民主主義も欠点は多い政治制度ですが、独裁主義よりもマシである事に異論のある人は少ないと思います。もちろん、独裁国家と違い、悪い独裁オーナーによるマンションの住民は別のマンションに引っ越す自由があります。しかし、引越しはコストが高いですし、引っ越した先の独裁オーナーが良い独裁者であるとも限りません。それよりは、民主主義により自分の力で良いマンションに変える事が出来る可能性がある方がマシだと思います。