ナンバーワン・オンリーワンの幻想

2007/8/24作成

フリーランスにしてもビジネス全体にしてもですが、ナンバーワンやオンリーワンを目指せと言うのはどこでも言われています。ナンバーワンやオンリーワンになることによって競争で優位に立てるため成功しやすいと言うわけです。それはそれで間違ってはいないとは思うのですが、私はナンバーワンやオンリーワンでなければならないことはないのではないかと考えています。多分、現実的には私の考えの方が間違っているとは思うんですが、今はそうは思えないということで、以下その理由を書きます。

まず、ナンバーワンでないと仕事が来ないわけでも、価格競争で叩かれて成り立たないわけでもありません。例えばフリーのプログラマが日本に1万人居るとして、その内1番の人しか仕事が来ないというわけではありません。その1番の人がいくら優秀でも、一人で世の中の全ての需要をまかなえるわけではありません。1万番目の人には仕事は来ないかもしれないけど、まあ8割くらいの人にはだいたい仕事は回るんじゃないでしょうか。要するに需要と供給なわけですから、そのバランスが極端に崩れない限りダンピング競争にはならないはずです。

次にオンリーワン。この仕事はこの人にしか出来ないという場合。もし今からあなたがフリーランスとして開業するとして、オンリーワンを目指したとします。他に競争相手が居ないわけですから、世の中にその仕事は今は存在しないことになります。需要はあるかもしれませんが、少なくともビジネスとして成り立っていません。そんな中でオンリーワンで仕事を回していこうということは市場そのものを創り出すことに等しいことになるわけです。別にそうして悪いわけではありませんが、すごく大変なことでもありますよと付け加えておきたくなります。そこまで茨の道を選ばなくても、もうちょっと楽な道もあるでしょうに。

また、オンリーワンでうまく仕事が回るようになったとしましょう。オンリーワンですから同じ仕事を出来る人は他には居ません。独占状態です。一時期、町工場で働く神の手を持つ職人さんが盛んに紹介されたことがありましたが、彼らもオンリーワンの一人ですね。そうした神の手を使ってようやく製造できる製品が出来たとします。でも、それってビジネスとして正しいんでしょうか。神の手を持つ人は他には居ませんから、その職人さんに万一のことがあったら、その製品はもう製造できなくなることになります。

私は全ての仕事は替えが利くものだと考えています。もちろん代替した場合にはコストが高くなるなどのデメリットもあるかもしれませんが、代替が不可能であることはないと思います。もし本当に代替が不可能なのだとしたら、それは仕事ではなく芸術なのではないかと思います。

ある特定の人にしか出来ない工程が含まれるビジネスは、その人がウィークポイントになってしまいます。もちろんそうしたビジネスが存在して悪いわけではないのですが、継続不可能なリスクがあるというのは、それ自体は大きな欠点であることは認識しておくべきだと思います。

また、これはこれから開業しようとする人に対するメッセージでもあります。開業指南ではどこでもナンバーワン・オンリーワンを見つけなさいと書いてあります。しかし、私はここで書いたとおりそれがなければ仕事が成り立たないわけではないと思っています。ここで私が書くことを信じて失敗しても責任を取れるわけでもないのですが、もしこれから開業しようと考えている人で、でも自分はナンバーワンやオンリーワンのスキルが無いからなぁと思っている人がいたら、ひとまずそのことは置いておいてもいいんじゃないかと私は思います。