星新一さんのショートショートを全部読んだ

2024/4/14作成

ある日突然、星新一さんのショートショートを全部読んでみようと思い立ちました。

星新一さんは生涯でショートショートを1000編以上書かれました。一時期は王貞治さんのホームランと本数を競っていたと思うのですが、ネットをググってもそういう話は出てこない。ネット以前の話はほんとにネットでは拾えないものですねぇ。まあ、私の記憶違いという可能性もあるんですが。

ともあれ1000編以上のショートショートです。正確なところは公式サイトのホシヅル図書館に記載がありまして、現在確認されているのは1138編だそうです。すごい数だなぁ。

私は子供の頃に星新一さんが好きでショートショートもよく読んでいたのですが、多分全体の半分も読めてないと思います。そもそも数えてなかったですしね。それがなんとなく悔しいなぁと思ったので、今回全読破してみようと思い立ったということです。

ちなみに星新一さんは全集が出ているのですが、全集だと構えてしまってかえって読みにくいかなぁという気がしたので、文庫で読むことにしました。

ということで文庫を入手して読んで、入手して読んで、を繰り返すこと約2年半。ついに全読破を達成しました。わーい、ぱちぱち。まあ別にたいしたことではないし、星新一ファンの間では全読破なんて当たり前のことだろうとは思うんですけどね。

全読破してみての感想ですが、まあいろいろと思うところはあります。五月雨にですが書き出してみましょうか。

まずですが、全部が全部面白かったわけではない。当たり前ですが、傑作もあればそこまででもない作品もあるでしょうし、読者である私に刺さるものもあれば刺さらないものもある。正直、オチがわからなくてなんだこりゃと思った作品もないでもない。でもまあ、それはそれ。どんな作家のどんな作品でもあることですよね。星新一のショートショートだと、なんとなく打率10割ってイメージを持ってしまっていましたが、実際にはそうでもなかったと。とても当たり前のことですが、実感できたのは実際に読んでみたからですよね。

星新一さんといえばエヌ氏が有名です。登場人物をあえて個性を持たせないために仮名を使うということですが、実際にはエヌ氏が登場するのはそれほど多くない。数までは数えませんでしたが。意外とですが名前のある場合も多々ありました。太郎とか花子とか、ここまでベタではありませんが、実際にありそうな日本人名がついた登場人物が結構な数いたんですね。これはちょっと意外でした。もちろん星新一さんも長い年月の中でいろいろ試行錯誤を繰り返して書かれていたでしょうから、全てが一つの統一した基準であるというわけでもないですから、当たり前のことでもあるのでしょうけれども。ともあれ、これも実際に読んでみたから気が付いたことですね。

星新一さんの作品と言えば、時代性を廃した表現というのも特徴です。いつまでも通用する寓話のような作品を目指していたとのことですから。しかし、実際のところとして書かれてから半世紀以上経過した2020年代からしてみると、やはりこれは古めかしいなぁというところがないでもない。まあ、それは仕方がないところではあるのですけれども。もしも星新一さんがご存命であれば、今でもそうした箇所を一生懸命時代性を廃するように書き直していらっしゃったのですかねぇ。

最後にこれはとても意外だったのですが、時代小説がいくつかあったこと。星新一さんといえばもちろんSF小説家なわけですが、時代小説も書いていらしたとは全く知りませんでした。具体的な書籍としては「殿さまの日」と「城のなかの人」が該当します。それぞれちゃんとした時代小説なんですが、でも読んでみるとああこれは星新一さんの作品だなぁと感じる味がある作品となっています。個人的には特に「紙の城」が特に気に入りましたね。

ということで、星新一さんのショートショートを全部読んだぞ記念に感じたことを少し書き出してみました。こうしてみると、偉大な作品群に対してろくでもないことしか感じられてないので、やっぱり読者のレベルも大事だなぁと思う次第です。