心の中にモンスターを育てる話

2024/4/6作成

世の中、人間関係の問題というのは多々あります。その問題にもいろんなパターンがあると思いますが、そのうちの一つはこんなパターンなのではないかなというお話です。例によって私が自分の経験をもとに想像で書いてるだけの話であって、これが正しいかどうかはわかりません。多分心理学とかではきちんと分析されているようなことではないかなと思いますが、心理学を勉強したことがないのでわかりません。多分今後も心理学を勉強しないので、ここに書いたことは私の想像のままということになります。まあ、そんな程度の適当な話なんで、適当に流し読みしていただければと思います。例によって予防線が長い。

ここにAさんとBさんがいるとします。登場人物は二人ですね。ですが、実はここにさらに二人の人物が存在するのではないかと思うのです。それはAさんからみたBさん、BさんからみたAさんの二人です。この二人はAさんBさんの心の中に存在します。

通常、人間は心の中を見せませんから、他人からは伺い知ることが出来ません。でも想像することは出来ます。AさんはBさんの言動から、今はこんな心理状態だなと想像することが出来ます。この想像したBさんがAさんの心の中のBさんということです。B'さんとしましょうか。B'さんは実在のBさんとは別の、Aさんの心の中の存在です。

Bさんが元気そうにしていれば、何かいいことがあったのかなと想像します。ふさぎ込んでいたら、何かいやなことがあったのかなと想像します。そうした想像のB'さんは実際のBさんと一致することもありますし、一致しないこともあります。でもAさんはあくまでもB'さんを前提にBさんと接することになります。ここのBさんとB'さんの乖離が、人間関係のトラブルのもとではないかなという仮説です。

BさんがAさんに何かを言ってきたとき、AさんはBさんの発した言葉しか分かりません。Bさんがどういう意図でその言葉を発したのかは分かりません。しかし、Aさんは心の中のB'さんを持っていて、B'さんの意図を想像することが出来ます。例えば、Bさんがある言葉を発したときに、B'さんがAさんに対して悪意を持っていたと想像することが出来るわけですね。

さて、このときAさんがBさんとB'さんを区別していれば問題はありません。Bさんが悪意を持っていると想像したけれど、それはあくまでもAさんの想像であって、実際のBさんの心の中は見えないから分からないということですね。それが客観的な事実なのですが、AさんがBさんとB'さんを同一視していたらどうでしょう。B'さんではなくBさんが悪意を持っていたと解釈してしまいます。実際にBさんが悪意を持っているかどうかはわからないのに、AさんからはBさんが悪意を持っていることが事実としてとらえられてしまいます。どうでしょう、人間関係のトラブルのなかで非常によくあるケースと思えませんか。あいつがこんなことを言ってきたのは、心の中でこのように考えているからに違いない。あいつはなんていやな奴なんだ、ってのはあるあるですよね。Aさんの中でB'さんの悪意はどんどん育っていって、いつかモンスターになってしまいます。こうなったらAさんとBさんの人間関係を修復するのはとても難しくなってしまいますね。

人間関係がこじれたときに、腹を割って話し合えばわかりあえるというのは、B'さんとBさんのずれを修正しようということです。B'さんを実際のBさんに合わせることで、B'さんをベースに行われていたBさんに対する評価を修正することが出来る。それで誤解が解けて人間関係も修復できるということですね。それは間違ってはないのですが、実際にはこれは非常に難しい。なぜならAさんにとっては自分の間違いを認めることになりますからね。人間、自分の間違いを素直に認めるというのはなかなか出来るものではない。なので、Aさんはあくまでも自分が作り出したモンスターであるB'さんに固執して、人間関係はずっとこじれたままになってしまう。残念ですが、世の中にある人間関係のこじれは大半がこういう状態のままではないかと思います。

間違いを認めるのが難しい以上に難問なのが、Aさんは実際にB'さんの悪意によって実際に傷ついてしまっているということです。BさんとB'さんのずれを修正したとして、Aさんの傷ついた心を癒すのは誰でしょうか。Aさんを傷つけた罪を償うのは誰でしょうか。

Bさんが非常に出来た人間で、自分がきっかけになったことなんだから自分が責任を負うよというのであればいいでしょう。でも、繰り返しますがAさんを傷つけたのはAさんが心の中で育てたモンスターであるB'さんで、Bさんではありません。BさんにはAさんを傷つけた罪はありませんから、償う必要もないのです。

もしもBさんとB'さんのずれをAさんが受け入れたとしたら、Aさんの傷ついた心は誰にも癒されずに放置されます。これはAさんにとってはつらい現実ですね。べき論で言えば、Aさんを傷つけたB'さんの生みの親はAさんなので、Aさんの傷を癒すのもAさんのつとめではあります。でも、Aさんはそんなことを受け入れられないでしょう。こうして、誤解から生じた人間関係のこじれは解消されることがなく続いていってしまうわけです。

でもまあ、それも仕方ないのかなと。であれば次善の策としては、人間関係自体を解消すればいいのではないかと思います。つまり、AさんとBさんはつき合いをやめてしまうってことですね。そう簡単にはつき合いをやめることは出来ないケースもありますが、最終的にはなんとかして人間関係を解消した方が、双方にとってメリットが大きいのではないかと思います。理想的な解決方法ではないかもしれませんが、それが処世術としては適切なのではないかなぁと個人的には思います。はい。