「カラフル」森絵都

2015/11/29作成

森絵都さんの作品は「宇宙のみなしご」で初めて読みました。とてもよかった。面白かった。解説で「20世紀の傑作のひとつ」とされていて、さすがにそれは持ち上げすぎではないかとは思うのですが、傑作には違いないと思いました。手元に残しておいて、機会があれば何度も再読したいです。

そして本書の「カラフル」。これもよかった。途中でラストの展開が見えてしまいましたが、それで本書の価値が減ずるものではありません。傑作だなぁと思っていたのですが、最後の最後「ホームステイだと思えばいいのです」で台無しです!ここまで繊細に作り上げてきたガラス細工のような精巧な作品が、たった一行で全て破壊されてしまった。森さんは、本当にこれでよかったと思っているのでしょうか?

意味がないとはわかりつつも、ここの行を黒く塗りつぶしてしまいたい。本書の他のすべてのページのすべての行がまばゆいばかりの輝きを放っていても、この1行によって価値がなくなってしまった。まったくもってもったいない。

「ぼく」はホームステイという一歩引いた視点からゆえに、それまで見えなかった様々なものを見ることが出来た。でもこれからはどうだ。かけがえのない人たちと、これからもホームステイとして接していいのか?人生は所詮数十年過ごすだけの場でしかないと割り切ってしまっていいのか?そんなことで、これからの数十年を生きていけるのか?全く同感できない!!