「仕事するのにオフィスはいらない」佐々木 俊尚

2010/3/16作成

BOOKOFFで買ったわけでもないし100円でなくて新刊で買ったんだけど、まあいいか。

内容はノマドという新しいワーキングスタイルに関する説明。ノマドは元々はらくだと共に砂漠を旅する人のことを言うけれど、それを現代の都会に置き換えて、モバイル機器を武器にして、都会の中を旅しながら仕事をする人を指すとのこと。

内容的には共感できるし、そういう時代が到来するというのもそれなりに納得もいく。自分自身に当てはめてみると、フリーランスとして仕事をしているという点では本書に出てくるノマドと合致してはいる。ただ、私の場合は出歩く機会がほとんどないし、カフェなどで仕事をするというのもあまりしたいとは思わなくて、基本的に家で仕事しているという点が違うけれど。だって、家でデスクトップパソコンを使うほうが使いやすいんだもん。

本書の残念な点は、ノマドに関する説明が全体の半分くらいしか無いこと。残りの半分は何かと言うと、クラウドサービスの説明に費やされている。言ってしまえば「できるクラウドコンピューティング」といった風体だ。ただ、実際にクラウドサービスにどのようなものがあって、どのように活用するかを説明しないとノマドについて実感がわきにくいというのはあるから、こういう構成になってしまうのも仕方がないかなとは思う。

本書で気になったのは、既に社会人として完成している筆者などはノマドでいいとして、まだ何も知らない新人はどうしたらいいのよって疑問がある。従来の会社では、新人はオフィスの中で上司や先輩から指導されて育っていったわけだけど、ノマドと言ってオフィスが無くなったら、その教育の場所が失われてしまう。本書に出てくるような優秀な人はそういう社会人教育を受けることなくノマドとして活躍できるだろうけれど、大多数の凡人はそうはいかないと思う。その点をどう解決するかというのが一つ課題かな、と。

あと細かい点なんだけど、ところどころに無料厨っぽい表現が出てくるのが残念。「このサービスは残念ながら有料なのですが」とか。あと、クラウドをやたらと無料という点を強調したりとか。営利企業が行っているサービスなんだから、無料で使えると言ったってそれは別のところで収益を上げることが出来ているからだろうに。クラウドを何でもかんでも無料と考えると、それは間違っていると思う。