「無印良女」群 ようこ

2007/8/5作成

なんとも評し難い本。いや、書評したいわけじゃないんで評する必要はないんだな。うーんと、なんとも受け取りにくい本。タイトルからすると女性をテーマにしたエッセイかと思うんだが、実際には男性のエピソードもいくつかある。って、そんなところに突っかかってもしゃーないか。

群ようこ氏の本は今まで一度も読んだことはなかって、今回初めて手にとってみた。群ようこ氏の名前自体は本屋でよく見かける。名前からすると女性なんだろうな。タイトルからして、内容は独身女性をテーマにしたエッセイかな。ならば筆者は30代独身女性といったところか。というように勝手に想像していたけど、本書を読んでその予想は当たっていた。ただ一つ誤算だったのは、それは20年前のことだったということ。本書の発行はなんと昭和61年。しかも内容は筆者が子供の頃や学生の頃の話。そう思ってみると、どのエピソードもなんとも昭和くさい話に思えてくるな。

本書全体としては最初に書いたとおり、どう受け取っていいか分からないんだけど、個々のエピソードとしては気になるものはいくつかある。

一つは友達まりこさんの話。成績優秀で美人で性格が良くて一流大学に進学して、まさに順風満帆な人生だったのに、詰まんない男に引っかかってどんぞこに突き落とされた話。まあ、死んだわけではないし、何が幸せで何が不幸でというのは本人次第なんだけど。そういうことではなくて、まりこさんというのは親の目から見ると理想的な育ち方をしているんですよ。多分、ご両親の努力も大変なものだったと思うし、その努力はひとえに子供が幸せになって欲しいと願うからですよね。なのに、その努力も成果も子供の幸せに結びつかなかったという結果。その理不尽さと難しさに、親の立場としてどうしたらいいんだろうかと考えさせられた。

もう一つは群ようこ氏の父親の話。ようこ氏は父親が嫌いなようで、その分辛辣に書いてある部分を差っぴいても、まあ優柔不断で頼りない人である。こういう人が家族のなかで浮いてしまって居場所がなくなってしまうのは、自業自得な部分はある。というかほとんどは本人の責任であるのは確かだろう。ただ、それも相方である奥さんがそんな夫でも立てて支えれば特に問題の無い普通の家庭として過ごせたんじゃないかとは思う。でも、ようこ氏の母はそんな人では全然無く、全く逆の猛女タイプの人だった。結果的に父親は家族の中で浮いてしまい、それを自覚した本人がなんとか家族に溶け込もうと右往左往する様を子供にすら見透かされる。挙句の果てには居辛くなって家出、そして離婚。この父親に同情することは別にないのだが、同じく優柔不断で頼りない父親である自分の行く先の一つがこうなんだとすると、暗澹たる気持ちになる。

余談だが、群ようこ氏とけらえいこ氏がなぜかいつもごっちゃになってしまうのは私だけだろうか。共通点と言えば名前がひらがなで最後が"こ"なだけなんだが。