「中央線なヒト」三善 里沙子

2007/8/3作成

中央線沿線に住まい中央線沿線をこよなく愛す筆者による中央線沿線の文化(?)を紹介した本。ま、これが中央線の全てを漏れなく書ききったというわけでもない。例えば杉並区はアニメタウンとして町興ししてたいりもするけど、筆者はそういう方面は苦手なのか全く触れてないし。また、誇張がないわけでもないし。でもまあ、それらも踏まえつつ読み物として面白く読めばそれでいい本でしょう。

実は私は中央線にはちょっとトラウマがあります。引越しでアパートを探していたとき、最初中央線沿線の荻窪界隈を見てたんですが、家賃が合わなくて段々北上。西武新宿線に達してしまったという過去があります。それでも荻窪はまあ近いので、よく遊びに行きましたけど。でも地元じゃないのよな。ということで、いつかは中央線沿線に住んでやるぞとひそかに心に誓っていたり。

住むなら一度は吉祥寺もいいなぁとも思うけど、でもやっぱり賑やか過ぎて落ち着かない感じもする。中野も別の意味で賑やかだし、やっぱり住むなら荻窪とか高円寺あたりのほうがいいか。いっそマニアックに西荻窪なんてのもいいかも、とか実際に住んだことがなくても語れてしまうくらい中央線沿線の街はキャラが立ってる。なるほど。本書のような本が成り立つわけだ。確かに、他の沿線では沿線自体のキャラはあっても各街ごとにここまでのキャラ立ちはあまりないかもしれない。その中央線の特異さに気付いた筆者は偉いかも。

ただ、この本で語られているのは中央線沿線の住民のあくまでも一部。具体的には独身の一人住まい。もちろん借家(アパート多し)。根無し草的に数年であちこちと転々としたりする、いわば都市遊民達。中央線にはそういうヒトが多くて文化の主流を形成しているのは事実だろうけれど、実際にはそれに当てはまらないヒトももちろん住んでいる。そして、私がもし実際に移り住むとしたら、家族と共に長期的に腰を据えて住まなければならない。そうしたとき、ここの地元はどういう形で向かえるのだろうかね。中央線から少し離れた元杉並区民としては、ちょっと一筋縄ではいかないものがあるような気がしているんだけど。

あともう一つ不満があるとすれば、筆者は実際に中央線に住まい中央線が大好き。だから中央線にかなり一方的に好意的に書かれている。逆に、中央線が嫌いなヒトが書いた中央線の本もあって読み比べられると面白いかも。あっても悪趣味なだけかなぁ。