「21世紀の狼たちへ」落合 信彦

2007/10/4作成

落合信彦氏と言っても名前を知ってるだけで、どういう人かよく知らない。せいぜい「スーパードライのCMでヘリから降りて来た人」くらいの認識。

内容は自身の体験談をベースにしたメッセージ集といった感じかな。ただ、ジャーナリストのわりにはあまり調べて書かないようで、枝葉末節の部分とはいえツッコミどころは多い。「コロンブスは世界の端は滝になっていると言われている時代に航海に出た」とか「老人はテレビばかりみていて頭を使わないからボケる」とかとか。筆者が言う世界と言っても実際にはアメリカのことばっかりやんとか、筆者が言うほどアメリカは何もかも素晴らしくないと思うし日本も何もかもダメでもないと思うし。読後、ちょっと気になってググってみたら経歴詐称疑惑とかもあるみたい。本人自体もツッコミどころなのか。

だいたい、私は全力投球で悔いなく生きるってのは眉唾ものだと思ってる。巻末で筆者がインタビューしているアイルトン・セナ氏にしても、もちろん類いまれなる才能の上に努力を重ねた人ではあろうが、それでも自身の怠惰に自己嫌悪に陥る事もあっただろう。別にセナを馬鹿にするわけではなく、どんなに優れた人であろうとも人間である限り完璧ではあり得ないということ。完璧であり得ないのをスタート地点にどこまで完璧を目指せるかが人間の価値だと思う。だから、筆者が「俺は常に全力を尽くして生きて来た」なんていうと、「えー」と思ってしまうわけだ。

とまあ悪口を書いてしまったけど、実はこういう無駄に熱い文章は嫌いではない。とういかちょっと好きではあるんだわな。読んでる間はちょっと体温高くなるし、読了直後は「よし、俺もいっちょやったるか」という気になれるし。実際には10分もすれば忘れてしまうし、いっちょやることはないんだけども。それでも、心の底にこの本が少しでも残り、多少なりとも影響を与えるのなら、価値はあると言えると思う。